アサイコンピュータサービス

9回目 「ドラッカー」は“やさしい”

ドラッカーは「経営学の詩人」です

一般の人は、「ドラッガー」といっても「その人はだれですか」と言われます。 けれど、経営学を学ぼうとする人や一部の経営者にとっては神のような存在です。 私の先輩は、ドラッガーの「マネジメント」は経営の「聖書(バイブル)」だと言っています。
ドラッガーの著書を読まれた人が経験させるのですが「難解」です。 それは細かな事例や説明があまりなく、その一方で経営の魂ともいえる真理をズバリ言い切っています。 その言い切り方は感動的で、特に後で反芻しその意味するものの価値が理解できたときはなおさらです。
表題での「ドラッカー」はやさしいは、すこし誤解を持たれそうなので先に説明します。
「やさしい」というのは誰でも簡単に分かるという意味ではありません。それは「優しい」という意味合いです。 ドラッカーの「マネジメント」を理解すると、従業員や社会に感謝され「成果」を実現することができるからです。

企業での「成果」の結果は「利益」としてあらわれます。ドラッガーは「利益」についてどのように考えて いるかをお話しします。「利益」とは「成果」の判定基準である。つまり、顧客に貢献できたマネジメントの 成功が「利益」として結実すると言っています。
私の好きな詩人としての「ドラッカー」のことばを並べます。「マーケティングは顧客からスタートする。 すなわち、現実、欲求、価値からスタートする」「マネジャーにできなければならないことは、 そのほとんどが教わらなくとも学ぶことができる。
しかし、学ぶことができない資質、後天的に獲得することのできない資質、始めから身につけていなければ 資質が一つだけある。才能ではない。真摯さである。」
「社会と地域に奉仕するというマネジメントの権限が認知されるには、組織なるものの本質に基盤を 置く正統性が必要とされる。そのような正統性の根拠は一つしかない。すなわち、人の強みを生産的なもの にすることである。これが組織の目的である。」
※「エッセンシャル版 マネジメント」ドラッガー著 より抜粋

「イカ釣り機」とマーケティング

テレビ番組の「カンブリヤ宮殿」を見ていて、これこそマネジメントの実現だと認識させられました。 経営者がドラッガーのマネジメントを学んで実践しているのではないでしょうがまったくセオリー道理なのに驚きます。
それは当然と言えば当然で、ドラッガーが「経営の真理」を洞察したからです。
ドラッガーは、「企業の目的は、それぞれの企業の外にある。・・・・・企業の目的の定義は一つしかない。 それは、顧客を創造することである。」
これは難解で、「顧客創造て何か」となりますが先で説明します。また、「企業は二つの、そして二つだけの 基本機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである。マーケティングとイノベーションだけが 成果をもたらす。」と言っています。
話がチンプンカンプンでドラッガーのマネジメント理論と「カンブリヤ宮殿」の「イカ釣りロボット」と どう関係があるのかということですが、マーケティングは「顧客からスタートします」 「顧客は何を買いたいか」「顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足はこれである」から製品を作ります。
マーケティングの目指すものは「顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、自ずから売れるように することである」、これがマーケティングです。
「イカ釣りロボット」をつくったのは東和電機製作所という会社です。もともとは造船所の下請けをしていた 会社で、漁業を営む親類からの依頼でモーター付きイカ釣り機を製作したのがきっかけです。 これがマーケティングになります。
製品作りは、顧客(顧客の欲求)からスタートしました。この商品は大ヒットしました。 しかし、大ヒットしたおかげでパナソニックも参入してくるありまさまで、あっという間にトップの座から 引きずり降ろされました。そこで、なんとか巻き返しはできないかということで東和電機製作所の イノベーション(革新)が始まります。

「イカ釣りロボット」とイノベーション

イカを釣り上げるのは、漁師の「しゃくり」と呼ばれる手の技が必要です。 東和電機製作所は、この技を「イカ釣り機」に組み込むことはできないかと考えました。 この考えのもとにイノベーション(革新)がはじまります。

革新の焦点は2つです。
漁師の「しゃくり」の技とコンピュータによる「技」の制御です。 コンピュータについては全くの専門外でしたが一から取り組んで、「しゃくりの技」 については各地の名物漁師のものを訪れてどんなに怒られても諦めないで寄り添ってプログラム化しました。 その結果、みごとに「イカ釣りロボット」の製作に成功しました。
さらにマグロの動きに合わせた自動で糸を制御する「マグロ一本釣り機」も開発して、大間のマグロ漁師の 9割が使う漁業の世界での革命を起こしました。
ドラッガーは「知識こそがもっとも生産性となる」と言っており、コンピュータ制御はイノベーション だが、それよりも漁師の「技」という「知識」の取り込みがイノベーション(革新)です。
この革新の実現によりライバルを寄せ付けない力を得ました。 さらに、顧客を巻き込んだネットワークの構築も、新たなビジネスモデルとなっており更なる「マーケティング」 と「イノべーション」の基盤を強めています。
今、さらに「LED集魚灯」を開発し、燃料の画期的削減に成功させサンマ漁では大活躍しています。 ただ、「イカ」についてはLEDの光りを識別されるので、さらなる知恵比べが続いています。
東和電機製作所は「イカ釣り機」で結果的ですが「マーケティング」をおこない。 「イカ釣りロボット」開発で「イノべーション」に取り組み、今までなかった市場を開拓しました。 「顧客創造」を実現しました。
ドラッガーの言う「企業は二つの、そして二つだけの基本機能を持つ。それがマーケティングと イノベーションである。マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。」です。