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14回目 経営コンセプトの経営における役割

人が「やる気」を出す理由

人が「やる気」を出すのは、
(1)やらなければ生活に支障をきたすとき
(2)やっていて生きがいがあるとき
(3)だれかが喜んでくれるとき この3つが「やる気」の源泉です。
すべての経営の競争力の源泉は、働く人の「やる気」にかかわっています。もちろん、最初の「仕事の設計」 を経営者が間違っているとその努力はゼロやマイナスですが、最初に「私たちは何を行わなければならない か」確信し、それを土台に「仕事」が構築して「やる気」のある人の任すことで成果が実現します。
3つの「やる気」の源泉について分析を行います。
(1)の「やらなければ生活に支障をきたすとき」は、恐れがやる気の源泉になっています。 この場合の「やる気」の特徴は、突破力になりますが持続力が弱いのでさらなる創造性に結びつきにくいことです。
(2)「やっていて生きがいがあるとき」と(3)「だれかが喜んでくれるとき」の「やる気」は、瞬発力は 弱いものの持続力があり創造力があります。そのことに「自分の信念」が加わる時、最高の創造性が発揮さ れ持続的に成果に向かってチャレンジされます。経営(マネジメント)は、ミッション(使命)を正しく 「仕事」として設計したうえでコミュニケーションし、この「人のやる気」を理解して全力を注いで働きかけ 続けることです。具体的にどうすればよいか、鍵は「経営コンセプト」です。
「経営コンセプト」は額に飾った標語ではありません。全スタッフが、何をするかが分かりかつ奮い立たせ る経営の根幹をなすエッセンスです。
経営者が全知全能を込めてはじめて提示できるものです。ただし、分かりやすく共感を呼び起こすものでなく てはなりません。さりげないが納得が行き「幸せ」と「夢が」がイメージでき行動へ結びつけるものです。
実際に提示されているものをみるととうぜんで、この「ことば」に経営の根幹に結びつくとは思えないようです。 逆にいうと「経営コンセプト」は示されれば当然のそのものです

経営者の心としての「経営コンセプト」

力のある中堅企業の「経営コンセプト」には、創業にかかわった人の想いが込められています。 読めば当たり前のことですが、よく味わえばそこに強い企業をつくりあげる知恵が込められています。 超優良企業では、従業員に「経営コンセプト」の想いを周知徹底することに最善を尽しています。

<仕事の設計と「経営コンセプト」>
マーケティングの目的は顧客の欲することに焦点をあわせて、その思いを適えることです。 「経営コンセプト」は、顧客の欲することに企業はどのように応えるかの指針をを明確にします。
企業活動は、複数の人間が力を合わせて一つの目的に合わせて実行することによってはじめて統一性がとれます。 目的と目標に「ブレ」があって集中できない事業には「強み」が形成されません。「仕事の設計」の始めには 「経営コンセプト」が、その方向と精神を示します。企業の経営資源は有限で、また形成された「強み」も限界 があります。
「弱み」では競争はできません。
「強み」を活用して焦点を絞り集中することによってはじめて強い企業となり、顧客の満足のための強い「効用」 が実現されます。

<やる気と「経営コンセプト」>
「やっていて生きがいがある」「だれかが喜んでくれる」の条件を整えることが「やる気」を引き出す源泉です。 競争に勝つための武器は、人が持つ創造性と高レベルのエネルギーを効果的に引き出すことにことにかかっています。 「経営コンセプト」によって企業の使命(ミッション)が的確に示されるとき、そのミッションに「共感する人 たちの心」への「メッセージ」としてへ伝わります。
人は「生活の糧」を求めるとともに、「生きるための意味」を求めます。「経営コンセプト」は、「生活の糧」 の手段を示すとともに、この「生きるための意味」に強くかかわりを持ちます。その人の「価値観」と「企業 の価値観」が共鳴するとき、働く人は幸せを感じ強く参画することを望み最大の貢献が実行します。
働く人は幸せを感じ強く参画し最大の貢献がなされるときにはじめて「示されているミッション」が的確に 実行され、ターゲットとする顧客に「最上の満足」をもたらすことが可能となります。
「経営コンセプト」のチャンピオンである松下幸之助さんは、「製品をつくる前にわたしの会社は人つくって います」と言われています。また、「経営理念を導入することによってはじめて企業に一本強い芯が通った」 とも述べられています。

ベストテン企業と「経営理念(コンセプト)」

2014/3月末の営業利益のベストテン企業
1位トヨタ 2位NTT 3位ソフトバンク 4位NTTドコモ 5位本田 6位国際石油開発帝石 7位KDDI 8位JT 9位日立 10位ニッサン (11位JR東海)
このなかで公的企業が民間企業になったのが、2位NTT 4位NTTドコモ 6位国際石油開発帝石 8位JT 11位JR東海です。
これらの企業は、独占的企業で経営理念をもとに成長した企業ではありません。

<公的企業が民営化した企業の経営理念>
2位NTT コーポレートガバナンスはありますが経営理念は述べられていません。
4位NTTドコモ 私たちは「新しいコミュニケーション文化の世界の創造」に向けて、個人の能力 を最大限に生かし、お客様に心から満足していただける、よりパーソナルなコミュニケーションの確立 をめざします。
6位国際石油開発帝石 エネルギーの安定的かつ効率的な供給を実現すること通じて、豊かな社会づく りに貢献する。
8位JT お客様を中心として、株主、従業員、社会のの4者に対する責任を高いレベルでバランスよく 果たし、4者の満足感を高めていく。 11位JR東海 健全な経営による世の中への貢献・近代的で愛され信頼されるサービスの提供。
これらが民営化した企業に示された経営理念です。感動されたでしょうか。
わたしは感動しませんし、どうすればそんな心持になれるかが“ピン”ときません。これに対して、 自動車メーカー3社をまず比較します

<1位トヨタ>
1.内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会 から信頼される企業市民をめざす
2.各国、各地域の文化、慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会 の発展に貢献する
3.クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球 と豊かな社会づくりに取り組む
4.様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えす る魅力あふれる商品・サービスを提供する
5.労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める 企業風土をつくる
6.グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長をめざす
7.開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄 を実現する

<5位本田>
基本理念 〈人間尊重〉・自立・平等・信頼〈三つの喜び(買う喜び、売る喜び、創る喜び) 〉 フィロソフィー 夢へのチャレンジとその実現で、世界に喜びと感動を

<10位ニッサン>
ミッション「未来への投資」 未来を志向する人々が“どのように社会に行きたいか”を実験し、 体験し、思索する機会を提供する。<目標>ミッションを実行することにより、社会価値の創造 に寄与する。3社を比較するとトヨタは全方位の世界企業であり、ホンダは夢の実現をめざし、日産 はゴーンさんにより大きく企業カラーが変化したことが伺われます。
その他では3位ソフトバンク情報革命で人々を幸せに孫さんの情報に「ターゲット」を絞って 固定観念にとらわれない事業展開が伺われます。企業理念には、それぞれの企業の企業文化を 形成する力があります。これらの企業理念を、経営者はその浸透に心血を注ぎ「企業の精神」と して企業活動を強力に進めています。