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8回目 成功した大手流通企業の情報化戦略

POSシステムの取り組み

POSシステムの「POS」とは「販売時点情報管理」を意味する言葉で、現代の流通小売業の 根幹を支えているシステムです。 スーパーやコンビニでスキャナでJANコードなどのバーコードを読み取りデータベースにより金額や 商品名を得る仕組みです。
このシステムが大幅に普及し始めたのは1980年代です。 日本では、セブンイレブンが積極的に導入しました。
米国での代表的な利用企業はウォルマートで、本格的利用はセブンイレブンよりも遅れるものの、 メーカーであるP&Gと共同活用してコスト削減も実現させています。

ウォルマートは、世界一の大手流通企業で、セブンイレブンを率いるセブン&アイ・ホールディングスも優良企業です。 両社とも先駆的に業務の情報化を率先し、優良企業の地位を確立しました。 現在社会の中での情報化の取り組みは生き残りの基本戦略です。
しかしながら「必要十分条件」という論理がありますが、優良企業になるには情報化は必要だが情報化さえすれば 優良企業になれるかいえば違うのでは。
優良企業は、最初から優良企業になるべく努力を続けています。 生産性向上意識を強く持っており、なんとかならないかといった欲求があってたどり着いたのがPOSシステム導入です。
よくあるの話ですが、情報システム化が成長の必須の条件であるので意欲をもって取り組んだが結果的 には挫折したという企業が多くあります。それは、前段階の準備が欠落しているからでしょう。

POSシステムの成功

POSシステム導入前は、レジ業務は手作業で行われ担当者の不正や誤った売価の打こみやさらには 担当者が腱鞘炎になるなどの支障がありました。導入後は、これらの支障が解消されました。 これはPOSシステム導入効果のほんの一部です。
POSシステムの利点に単品管理があります。 それは、商品名・価格・数量・日時などの販売実績情報を収集して「いつ・どの商品が・どんな 価格で・いくつ売れたか」という売れ行き動向が一目で把握できることです。
この機能を活用してイトーヨーカードウは、死に筋商品のカットにチャレンジしました。 その結果、死に筋商品を売り場より排除され売れ筋商品の追加とさらにチャレンジ商品の試験販売 までできるようになりました。 大型量販店はこのおかげで売り上げが3倍になったといわれています。
しかし、POSシステムを導入したのはイトーヨーカードウだけではありません。 ダイエーもニチイも導入しました。その中でイトーヨーカードウが生き残ったにはそれなりの訳があります。 情報化の真の意味は、生き残った量販店の中身を見る必要があります。 そこから真の意味の情報化が浮かび上がってきます。

生き残れる情報化とは何なのか

イトーヨーカードウの取り組みを見て行きます。 イトーヨーカードウには「業務改革」と呼ばれた根本改革をおこなった歴史がありその指揮を 執ったのが、当時常務であった鈴木敏文さんです。
その経緯は、1981年下期に創業以来30%という高い増益率を続けてきた業績が、減益の見通を 契機として実施されました。
「死に筋排除」「仮説と検証」「現場への権限委譲」が業務改革の基本方針です。 1982年2月23日から実施され、毎週火曜日に東京の本社においてチーフバイヤーをはじめとして 幹部170名前後が参加して実施されました。2006年に終わるまで、その会議は通算950回24年近く続けてられました。

今でも、全国の120店舗以上の店長が毎週月曜日早朝に東京の本部に集合して各店舗の問題点、成功事例が 発表させ情報の共有化が行われています。 テレビ会議などのネット環境が整っているにもかかわらず、多額の経費をかけて実施され、ここで 行われる情報交換はフェースツウフェースです。
情報システム化は、基盤となる「情報」や「知識」の意味を正しく理解して準備を整えて実施するのが 最も効果的な成果を生みます。
付け加えて、前述のウォルマートでは幹部が月曜日に本社を出て金曜日まで各店舗を回り現場の 問題点の掘り出して、毎土曜日の早朝7時30分から「営業全体会議」を実施しています。