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46回目 利益とは何か

利益の獲得の一般構造

一昔前、事業活動の目標は売上でした。 その売上を上げるには、社長が率先して徹夜もいとわず働くことでした。 社長さんが勤勉で、奥さんがしっかりお金を管理している企業がそれなり の売上を実現していました。 利益も売り上げの上昇にともなって獲得されていました。
それが、高度成長期を経てさらにバブル期を過ぎると事情はまったく一変 してしまいました。 いくら勤勉に働いても、勝てない技術で製品をつくっていては注文が伸び ない状況になってきました。 たまに注文があっても値段をギリギリまで絞られます。
ただこんな中でも、他と違った動きでメキメキと業容を拡大して中堅企業 に成長してきたところがあります。 成長のキーワードは、世の中の変わり目の欲求に対応するかビックリする レベルの対応を行ったことです。 ポイントは「そんなことができるなんて」の驚きが焦点です。

利益の獲得の一般構造は 売上=他にはない製品・技術・ノウハウ・販路・広告・価格の連続革新 コスト=日常的なカイゼン、戦略的な変革による競争優位 売上は他ではできないモノの提供で実現するか、低価格を武器にするか、 そして継続的コスト削減で利益の獲得をはかります。
良い方向に変化しなければ、同じことの連続では陳腐化します。 ソフトバンクは、“情報革命で人々を幸せに”を理念に絶えず社会の根幹 の事業展開を行って「一兆、二兆の大ぼら」を実現させています。 最近でも、世界初の感情を持ったパーソナルロボット「ペッパー」と称し て挑戦的な事業展開を行っています。
孫さんの事業は、いつも捨て身の事業展開を行っています。 基本的な「夢のビジョン」は孫さんが構想しぶち上げます。 その実行については、最も適性のあると思われる人材を抜擢し実行を委ね ます。
あとは抜擢人材の活躍と孫さんのチェック・支援ですすめられて行きます。 成長を続ける中堅企業のビジネスモデルは、孫さんの場合、基本ビジョン を明確な形で示することから始めています。
シャープがけ躓ずいたのは、捨て身での変化を疎かにしたからでしょう。 ダイソンが売上を伸ばしたのは、なんの変哲もなさそうな掃除機や扇風機 の既存製品に思い切った機能向上をはかったからです。

利益の活用

松下幸之助さんが「ダム式経営」を説いています。 「資金、人材、技術等のダムをつくり、余裕のある経営をしていこう」と いうもので、その方法として「まず願うことですな。願わないとできませ んな」と答えて誰もが当たり前だとの感想を持ちました。 その中で一人感銘した人がいました、京セラの稲盛和夫です。
多くの起業家が夢見るのは「大儲けして生活の基盤をととのえ、うまくす れば高級マンション最上階に住まいを構え、世界一周の旅行を満喫したい」 ということになります。 「経営のコツここなりと気づいた価値は百万両」を悟った幸之助さんは、 「資金のダム」をつくることを「願うことですな」と言っています。

マネジメントの創始者のドラッカーは「利益は未来費用である。」と言っ ています。 そして顧客が下す「成果の判定基準」だと言っています。
また松下幸助さんですが、このことを「利益をあげられない経営は、罪悪 だ」とまで言っています。
伊丹十三監督の映画『マルサの女』で面白い場面がありました。 山崎努が演じるラブホテルの経営者が、金持ちになる方法を明かす場面で 「ガラスコップに水が一滴一滴溜まっていって一杯になっても、飲んでは いけない。溢れて垂れた滴を舐めとり渇きをいやす」言いえて妙です。 溢れるまでの内部留保を再投資して、余分が出て配分ということです。
アメリカの最大の流通業はウォルマートです。 このウォルマートの創始者のサム・ウォルトンは1ドルの価値をもっとも 重んじた人物です。
ウォルトン家では、子供がみんな店舗でのアルバイトを行っていました。 そのバイト代は、この事業へと投資されました。 サム・ウォルトンは、1985年から1988年まで、フォーブスで世界 一の金持ちとして紹介されました。 しかし、その趣味はいたって質素で「うずら狩り」とテニスです。 さらにもう一つはストアコンパリゾン(競合店比較調査)で、どこに行っ ても競合店を巡り「よいところ」をすぐに取り入れ(真似)ました。

ウォルマートの創業期には、同じくして多くの起業成功者が現れました。 この成功者とサム・ウォルトンが大きく違ったところがあります。 それは、サム・ウォルトンは得た利益を再投資したのに対し、同業成功者 は高級車やクルーザーやさらに別荘の購入に向けたことです。 最終的にこの差が後々の大きな結果の違いをもたらしました。
ウォルマートはEDLP(Every Day, Low Price)を掲げて、情報管理、 物流管理、徹底したコスト削減を武器にし低価格を実現させて世界最大の 売上げを誇る企業となりました。
コストパフォーマンスでは顧客により良い満足を与えていますが、しかし 一方では多くの低賃金の非正規雇用従業員をも生み出しています。
利益の役割は、顧客満足のための継続した効用を再生産することです。 それと同じくして、内部のいる関係者従業員の物心両面の幸福に貢献し、 さらに社会に貢献することです。
ただし、利益のみに焦点を絞った場合そのバランス調整は微妙で、このバ ランス感覚は経営者の価値観とセンスの領域に委ねられています。

利益の獲得の方法

利益の向上のためのもっとも即効のある方法はコスト削減です。 一般的に業績が悪化して行き詰まって取られる方法は、報酬や給料のカッ トです。 ここまで行くと極限というより仕方がない状況で、ここまで行かないよう に普段のムダの排除や生産性の向上が行われなければなりません。
もちろん、利益獲得のためには売上の向上が常套手段です。 売上向上は高度成長期、バブル期までは、日常的な努力で適えられていま した。
ところが今は、戦略経営が声高に唱えられており情報や知識の高度活用や 最大の経営資源である人材の重要性がさらに注目されています。
話を戻して、利益の獲得に即効性のあるコストダウンに話を戻します。 まず最初に基本として取り組まなければならないのは「3S(整理・整頓 ・清掃)です。 この“3S”がもっとも重視され実行されているのは最大利益を計上して いるトヨタで、もっとも行われていないのは多くの町工場です。
京セラでは材料の仕入は、当用買(必要な都度購入)が行われています。 大量仕入れは確かに仕入値引きなどのメリットがあります。 しかし、3Sから見ると不都合の要素が混在しています。
場所を塞ぎそして場所を取り、選別・運搬に手間がかかるは、陳腐化する とゴミになるわ不良コストの固まりになる傾向が多くあります。

事実、町工場でよく見かけるのは材料・部品が通路にうず高く積まれ、貸 倉庫にまで古い不良在庫の山で、作業効率は悪いは余計な倉庫代は払うは 大切な資金は循環せず、これでもかこれでもかのムダの連続です。 1円のコストカットさえ勝敗の分かれ目になるにもかかわらず、業績の悪 い企業ほど資金の放漫な無駄遣いが行なわれています。
これに対してご存知のようにトヨタは、真逆でコストカットを徹底してい ます。 ジャストインタイム(必要なものを、必要なときに、必要なだけ)方式で 材料・部品在庫の不必要な余分は一切ありません。 また、3Sと動作管理で寸分の時間ロスも排除しています。
さらにコストダウンについて「カイゼン」に話をすすめます。 仕事の現場では、働く人でなければ感じることのできないまた考え付かな いカイゼンのアイディアが偏在しています。
これらのアイディアのことを「垂れ下がった果実」と言い、働く人が話す 気になればすぐさまコストダウンや収益改善がはかられます。

東西を問わずエクセレント・カンパニー(優良企業)は、この「垂れ下が った果実」の収穫が巧みです。 トヨタは「乾いた雑巾を絞る」ように、積極的に従業員の知恵と知識を活 用して生産性の向上をはかっています。
アメリカのGEは「シックス・シグマ」でこれを行っています。 売上の向上については、カイゼンだけでは及ばない領域に入ります。 戦略的革新(イノベーション)経営、知識経営など、ミッションやコンセ プトの策定からはじまるマネジメントの実行が求められます。
マネジメントは、科学の部分も含みますが、深い人間理解も求められ経営 者が行わなければならない総合アートです。