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17回目 “売れる商品”って“何”

“売れるのは「効用」です

製品・商品をつくるとき、その出発点はこれをつくって儲けてやろうと考 えてはじめるのが一般的です。
それも、あの人があれで成功したから自分もやろうとが多く見られます。 しかし、これで成功するのは一定の条件を満たしたときのみで、ほとんど がムダなお金と貴重な時間と徒労感しか得られないということがことが見 すかさられます。
成功する売れる商品とは「作り手の思惑」と無関係です。 真似して成功できる条件は、真似る対象になる「元の商品」より性能やデ ザインがよくて価格も安くてかつ効果的な広告が行えているときにのみに 可能性があります。
もしくはある特徴が際立って高くて、顧客の支持を受けたときです。 これと異なってよくあるケースは、今までなかったものをつくって一山儲 けてやろうというケースです。
この発想から大なる成功をもたらす機会は充分あります。 なかには大ヒットするケースもあります。 しかしながら、そのほとんどの多くは失敗に終わります。
なかにはモノづくりの天才が、びっくりする複雑で精巧な製品が創り上げ られることもあります。 しかし、そんなことは稀でほとんどが安易なアイディアで市場の状況も考 えず、独りよがりで自己満足に終わるケースの方が圧倒的に多いようです。
話を戻しますが天才のすばらしき機能の製品が売れるかということですが、 すばらしき機能がすぐに売れるとは限りません。
売れるためには、ただ一つの条件が必要です。 それは簡単な論理で、顧客が「買う気になるか」どうかということです。 すべては買う人が決めます。
顧客が買うことを決めるのは、その時々の状況で支払う出費と犠牲のトー タルが、得られる欲求の満足より多いと期待される時です。 顧客が購入するのは、商品というそのものではありません。
商品購入によって得られる満足に対する期待です。 そして、期待通りの「満足」が得られたときに「再購入」に結びつき、期 待以上の「感動」を得られたとき愛顧を得られることになります。
顧客が購入するのは「満足」をもたらす商品やサービスの「効用」です。 顧客の側から出発する「効用」が消費に結びつく「手がかり」です。

「効用」をどのように作り顧客に届けるか

「効用」とは、顧客が要望する欲求を満たすことです。 そうしたらこの「効用」をどのように見つけるか、答えは顧客に聴くこと と活用の場面にある顧客の行動を探ることです。
誰が行うか、解答は企業の全従業員が行わなければなりません。 もっとも実行しなければならない存在は経営者です。 「効用」を見つけることができれば、ここから「まっとう」な「真の商品」 づくりを始めることができるからです。
消臭剤のエステーの社長さんは、スーパーの売り場に出かけて顧客が自社 商品を選んでいるとことを見つけて気軽に声がけし聴きとりをします。 大手の飲食店チェーンなどは、新商品を開発するときターゲット顧客を集 め試食会を行い感想をデータ化するとともにマジックミラーから顧客の生 な表情を見てヒントを得ています。
顧客の声は社内でも簡単に聞き取ることができます。 これを戦略しているのは高業績を実現している日用品雑貨のメーカーや量 販店で、社内にいくつもの開発グループを有し自由に自身の発想で商品開 発をすることを促します。
自由な発想を奨励するのは、開発者自身が「顧客の声」のそのものだから です。しかし、最終の商品化の意思決定は経営者が行います。 なぜなら成功する商品には独特の匂いや味わいが求められ、ここでは最も 責任があり日頃より感覚を磨いている経営者に「一日の長」があるからで しょう。そうであるから、経営者であるとも言えます。
中堅企業の社長さんで電車通勤する人が結構いるようです。 それは街の雰囲気や繁華街を歩いている人の様子から世相を読み解くとと もに商品開発に結びつくアイディアを得ようとするからで、世間の“にお い”が分からないのでは感覚器官がマヒしているのも同じになります。
さらにすすんでいるのはP&Gで、ターゲットとする顧客のもとに社員が 一定期間同居し生活をともにします。 その生活の場より、生活パターンや様式の特徴・習慣を実体験の中で逐一 観察し商品開発の課題やヒントを得ることに努めます。 顧客自身すら知らないニーズをここから探り当てます。
顧客からスタートする商品活動が「マーケティング」で、マネジメントの 2大機能の一つです。 マーケティングの骨子は、効用を商品やサービスに作り込みことです。 顧客の満たされない欲求の実現させる「効用」こそが「商品」に込められ なければならないもっとも基本的でかつ原則的な要件です。

日清食品のラーメン物語

チキンラーメンの生みの親も、カップラーメンの生みの親も日清食品の創業 者・安藤百福氏です。
この商品開発は、まったく世になかったものを生み出した代表例です。 チキンラーメンは終戦直後の大阪の闇市で一杯のラーメンを食べるために寒 さの中震えながら順番を待つ人々の長い行列を見たのがきっかけで、そこか ら開発を始めました。
開発のポイントは、長期保存のためどうやって乾燥させまた熱湯で素早く戻 せるようにするかということで明け暮れる毎日試行錯誤を重ねました。
商品開発がなったのは、開発から約1年たったある日に台所で天ぷらを揚げて いる奥様を見たときです。 奥様を押しのけ麺を油に入れると水分が泡を立てて弾き出されました。
揚がった麺の表面には無数の穴が開き、熱湯を注ぐとお湯が吸収され柔らか になり、1958年遂に世界初のインスタントラーメンが誕生しました。
何もなかったものが世に誕生するのは並大抵のことではありません。 さらに、よいものだからといって簡単に販売に結びつくものでもないという 難しさもあります。
カップヌードルも安藤百福氏が生みの親ですが、ロサンゼルスヘ「チキンラ ーメン」を売り込みに行ったことがきっかけです。
試食時に紙コップに麺を割って入れ、お湯を注ぎフォークで食べ始めた時の ことです。 それが「容器入りインスタントラーメン」開発の重要なヒントとなりました。
着想を得てから5年をかけて、世界初のカップ麺が誕生しました。 そこから地道な販売促進活動が始まります。 ファーストフードの時代の到来を予見して、東京・銀座の歩行者天国で試食 販売を実施しました。
試食販売は回を重ねるごとに人気が高まってきました。
この「カップヌードル」の認知度を飛躍的に高めたのが連合赤軍による「あ さま山荘」事件です。
雪の中で機動隊員が食べていたのが「カップヌードル」でテレビを見ていた 視聴者に大きくアピールし羽が生えたように売れ出され生産が追いつかなく なったほどでした。
たまたまの結果でしたが、よい商品でもよいアピールがなければ売り上げが 爆発しません。
アピ-ルの最も模範的な事例はスティーブ・ジョブズのプレゼンテーションです。 スティーブ・ジョブズのプレゼンテーションは劇的です。 聞き手の立場に立ち、聴衆に理解してもらいやすいシンプルなメッセージを わかりやすいストーリーとして展開しています。
経営者自身がジーパンでステージに立ち、聴衆の立場に立って細かなところ まで気を配ったシンプルなプレゼンです。 このアピールで、商品特性とも相まって一気に商品認知が高まり急激な販売へ と結びつきました。
商品が売れるということは、物まねを超えたセンスが必要です。 そしてそれに加えてなみなみならない忍耐が求められます。