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60回目 「 経営」の筋目

創業経営者の「成功の機会」

テレビ東京の「カンブリア宮殿」をよく見るのですが、成功した経営者の生 な言葉が聞けて「やはりそうだよねぇ」と感心することがよくあります。 12月3日の「インフォマート」の社長村上勝照さんの「成功譚」からもい くつもの貴重なヒントを拾い上げることができました。
ビジネスが軌道に乗るには、それを可能にさせた基本要件があります。 いきなりですが、「創業者」になる人はどんな性格が多いでしょうか。
当然多いのは、「呑気」で「無謀」な性格でしょう。 臆病で安全志向の人が、創業するというのはあまり聞きません。 「呑気」で「無謀」な人がとにかくも会社を興しますが、大成するにはそこ に「いくつかの条件」が加わらなければ泡ははじけてしまいます。

「インフォマート」の村上勝照さんも、そのような一人で会社を立ち上げて は壊しまた立ち上げては壊すということを繰り返したようです。 典型的な失敗する経営者のパターンです。 功なった経営者にもこのケースが多くあり、ここで大切なポイントは「めげ ない」ことで「めげなければ」豊かな経験は先の成功の種になります。
村上勝照さんから面白い話が出ていました。
最初の創業を思い立ったのは「自動車を買いたい、お金がほしい」というこ とで、ほとんどの創業者に見られるパターンです。 一部のIT関係を含むベンチャー企業でうまくいくケースはありますが、少 しの風向きの変化で様子は一転し破たんの憂き目にあいます。
事業を軌道に乗せるには、最初の創業動機が「自動車を買いたい、遊ぶお金 がほしい」であっても良いのですが、そこで痛い目にあって何かに気が付か なければつまり「悟り」「覚醒」がなければ花開きません。

「インフォマート」の村上勝照さんが、そこで考えたのが「どうも世の中に 役立つ仕事をしなければ成功しないようだ」という閃きでした。
成功するするために思いつかなければならないのは、他の追随をゆるさない 「世の中に役立つ仕事」かどうかです。

マクドナルドのレイ・クロックは「QSC&V(品質、サービス、清潔さ& 価値)」の「信念」のもとに、ハンバーガーでもって「あらゆる国のあらゆ る人の笑顔」をつくり世界中を制覇しました。
※ただし、これは絶えず修正しないことには繁栄はつづきませんが。

どんな事業でもその基本は「世の中に役立つ」で、これなくして事業に「信 念」と「自信」は持てず強い経営など行うことはできません。 松下幸之助さんも天理教本部で信者さんの喜んで奉仕する姿を見て「貧を除 き富をつくるわれわれの仕事は、人生至高の尊き聖業」であるとの悟りを開 き強い「信念」を持てて「大松下」の道を歩んで行くことになります。

「インフォマート」の村上勝照さんの場合は、たまたま同時期に地方の食品 販売業者から「東京に進出したいが出張費などを負担できず困っている」と いう訴え、百貨店の食品売場担当者から「地方の特産品に人気があるけれど 見つけることができなくて困っている」という悩みが聞こえてきました。 そこで思い至ったのが、「困っている人たち」を結びつける事業でした。
そこからが勝照さんの場合の「ユニーク」さで、誰もやっていなかった方法 でやって見たいと考えたことです。

これはマクドナルドのレイ・クロックの成功要因とダブります。 レイ・クロックの言うところの「Be daring(勇気を持って)、Be first (誰よりも先に)、Be different(人と違ったことをする)」です。 二番煎じで他人と同じことをしていても、勝つことなど適いません。
村上さんが考えついたことは、「新聞の切り抜きからヒントを得た」だれも まだ手がけていなかったインターネット・ビジネスでした。
ヤフーや楽天が立ち上げってきた頃のIT黎明期に、「だれも試みていなか った手法」に「人に先駆けて」に行ったことがヒット要因となりました。

成功のための「原理原則」

ビジネスを成功に導くには、そのために必要な基本原則があります。 この原則なくして、勝ち抜く強いビジネスが成り立つことはありません。
その基本が、マネジメントの創始者ドラッカーの言うところの「マーケティ ング」と「イノベーション」であり「顧客創造」です。
これはまさに「インフォマート」の村上勝照さんが実践したことです。

テレビ番組の「カンブリア宮殿」で、「インフォマート」の村上勝照さんと 同じインターネットを活用してビジネス展開している「ビースタイル」の増 村一郎さんが紹介されていました。
増村一郎さんも事業分野は違うものの「世の中に役立つ」こと、「だれも行 っていない手法」でもって4万人以上の雇用を実現させています。

増村一郎さんは、元大手人材派遣業に勤めていたヤリ手営業マンでした。 ある時、英語もペラペラの優秀な同僚の女性が辞めて、子育て環境のなか時 給の安いスーパーに勤めざるえない実情を知りました。
「あんな優秀な人が適切な場と機会を得ることがなく、能力が埋もれてしま っている。」これが事業を立ち上げる切っ掛けとなりました。

最初「市場」をつくること「顧客創造」から取り組めました。 企業にはそれぞれその独特な就労形態があり、事業として成り立たせるには そのニーズに合わせるマーケティングが必要です。
「コンパス」と称する業務分析システムにより業務分析を行い企業ニーズや 就労形態など詳細を明らかにして行きました。
既婚女性でも、元の職場で特殊技能を発揮していた人材が多くいます。 中小企業では、優秀な人材をフルタイムで雇用する余力がありません。
その場合はパート・タイム勤務が都合よく、雇用者も雇用される側も両者の 利害が一致しレベルの高い成果を上げることを可能になります。 新たに、埋もれた「能力活用」の道が開らかれたと言えます。

中堅企業の場合は、少し様子が異なります。 特殊な能力や資格を要する業務では、いつも人手不足勝ちなのが悩みです。 ここでは業務の詳細に精通している社員のサポートによって、主婦の事情に 合わせたシフトが組まれて対応でき問題解決となります。
ビジネス・モデルできると、マッチングが問題になります。

「インフォマート」では、インターネット・サイトを活用してのシステムを 構築してをマッチングのツールとして採用していますが、 「ビースタイル」の増村さんも、そのころ一般化されていなかったインター ネット・サイトを活用してマッチングの促進をはかりました。 ここでも誰も手掛けていない「世のため」が、事業を成功に導いています。 この事例で言いたいことは、創業を成功に導かれていくための拠り所です。 人には「自動車を買いたい、遊ぶお金がほしい、いい服を着たい」といった 基本欲求がありますが、これ自体は咎めだてを受けるものではありません。

しかし、成功するために「人のやっていないこと、世のためになる」が必要 であることを試行錯誤のなかで分からねければなりません。
ソフト・バンクの孫さんは非常な勉強家だし、ユニクロの柳井さんも非常な 読書家でよりよい経営を実践するのはどうしたらよいか模索しています。
準備や努力をしない冒険家に、「マグレ」があったとしてもそれを継続させ てもらえるほど社会は不合理でも甘くもありません。 過去の成功事例を自分なりに検証してよく学ぶことは、経営者の条件です。
とは言いながら学者になることをすすめている訳ではありません。 経営の「原理原則」は、本などの知識だけで分かり得るものではありません。 知識で「知っている」ことと、「分かる」ことはまったく別次元の事柄です。

経営者は私見ですが「ヤンチャ」な人が多いようで、「ヤンチャ」が事業に 失敗しそこで悩んで悩んで悩みぬいた結論が生な原理原則となります。 散文的に述べると、事業にチャレンジして経験を積んで「世のため人のため」 にチャンスがあることを分かる(知るだけではダメです)こと。 人は「お金を払ったからと言って真の能力や力は発揮しない」こと。 儲かっている事業でも「二番煎じでなく、一番でなければ勝てない」こと。 「高い目標なしで行う事業は、そ以上の高みに上らない。」ことなどです。

成功のための「自己分析」

万能の才能の人などおらず、それぞれが活躍できる分野は異質です。 ために成功を収めるには、自身の「得意」を知ることが要件になります。 大きく分けて経営者タイプ、専門家タイプ、特殊才能タイプがあります。
組織は、いろんなタイプの人が協働することによって成果を実現させています。 経営者に求められるのは、専門家、特殊才能を最高に活用させることです。

もちろん企業の成果の最終責務は、経営者が負わなければなりません。 そのために最終意思決定権が委ねられているのであって、それは固有の責務と 対を成すものです。
これが奥義なのでしょうか、業績のよい中堅企業ほど「販売する商品の最終チ ェック」は他人に委ねず経営者自身が見て触れて使用して行っています。
人間とは面白いもので、委ねられて責任が負わさてはじめて真剣になります。 パナソニック(旧松下電器)が事業部制をとったり京セラがアメーバ組織を採 用するのは、成果について真剣に責任を感じ考える人を増やすためです。
少し話が横道に逸れますが、松下さんが責任者を選ぶとき「運の強い人」を選 んだそうで、東郷平八郎が連合艦隊司令長官に選ばれたのもその理由です。

タイプ論に話を戻しますが、人それぞれに特異とする能力があり専門家の人は 経営者(マネジャー)に向きません。 本田宗一郎さんのような専門家タイプの人がマネジメントに立障ると不都合が おこってしまい、藤沢武夫さんに会社の実印ごと委ねました。
「社長」としてもっとも経営の本質を知った勇気ある賢い判断だと言えます。
ただし、この二人の例は稀有なことあったとしても普遍的な判断です。 経営者は専門技術について理解していることを要しますが、求められるのはマ ネジメントの専門知識であり精神であり実行力です。
ソフトバンクの孫さんなどは、最も一流の専門家の活用に秀でた人のようです。 iPS細胞の山中教授なども、経営感覚の抜群の人のようです。

専門家タイプの人は不得意な経営にタッチしない方がよく、その場合は本田さ んのようにマネジメントに精通した真摯な人と協働することが求められます。 原則として、自分が専門家タイプであると感じたら社長となることには不都合 ないのですが専門分野に専念し、有能なマネジャーを見つけることです。
どちらにしても専門家とマネジャーは、協働してこそ総合力を発揮します。

企業の創業を目指す人は、最初に「自分の得意な才能」を知らなければならず そこから必要とされるチーム・メンバー考え編成しなければなりません。 はじめに紹介しました「インフォマート」の村上勝照さんは、パソコンについ てはまったく知識がなく派遣の女子社員からスイッチの入れ方を教わったとい うことで、この場合の女子社員も専門家と言えます。
最後のタイプ、「特殊才能タイプ」についても身の処し方を考えてみます。 このタイプの人が「世に立つ」には、有能なマネジャーの存在はかかせません。 少しうがった例ですが、「ヘレン・ケラー」は「アン・サリヴァン」の献身に より教育家、社会福祉活動家として社会にできることできました。
小林幸子が紅白歌合戦に出れなくなったのも、この例なのかもしれません。

才能はいずれが上でいずれが下ということはなく、それぞれの成果のために発 揮できる能力と分野が異なるだけですべてが必要です。
組織は成果を達成するためのものであり、経営者は主に「マネジメントのエッ センス」を「分かって」を経営(マネジメント)することが必要です。 ホンダは、技術者社長の「エッセンス」を重視しています。

経営者には意外に「ヤンチャ」な人が向いているようです。 大手中堅で「業績の良い」企業のトップには、元体育会系の主将経験者等がそ れなりに見受けられるようです。
創業者が経営者として大成するには、多くの失敗や辛酸を舐めなければならず そこで「分かった」ことがホンモノの経営力として身につけられて行きます。

大成するすべてのタイプの人について共通するのは、その道で最初から一流に なることを目指しすこととやり抜くことです。 「運は準備が整った人に開かれる。」と言われています。
「準備」とは、自身の好きなこと得意なことに関して一流を目指して地味に忍 耐づよく育成続けることが唯一の方策であるといえそうです。

「60回目」に際して

この「メール・マガジン」がベースとしているのは「ドラッガー」の「マネジ メント」で、できるだけ分かり易くということで書かせていただきました。
「ドラッカー」は正直言って分かりにくいし「預言者の宣託」的で何度も読ん でやっと「その意味するところ」の深さを認識させられます。
「分かりやすく」は非常に難しい作業で至らなさを感じている次第です。

今、307人の方の登録をいただいており感謝いたします。 最近は理屈が先行し、私も「預言者の宣託」的な表現のきらいが強くなってき て知識の熟成の必要性を感じております。
毎週発行させていただいていますが、もう少しゆとりをもって分かり易いもの として発行させていただければと思い「随時発行」に切り替えます。
なお、「ホームページ」で過去に作成したものがあります。
まだ、理解が不十分な時期につくったものなので修正が必要なものですが、一 覧的になっていますので見やすくご理解いただけかとも思います。
下記の「URL」ですので参考にしていただければ幸いです。
以上のことにつき、お役に立てれば幸いです。よろしくお願いいたします。

≪アベノ塾≫URL:http://abenoj.jimdo.com/