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45回目 効果的な評価とは

何のために評価するか

評価するのが楽しい人は、評論家です。 ところで経営者は、何のために評価しなければならないのか。 そもそも、評価は必要なのか。 結論から言うと、経営の目的たる顧客の欲求の満足を実現させるならばと いう条件のもとで欠かせない手段となります。

評価を正しく行うには、絶対に外してはいけない3つの要件があります。 まず一つ目は、賞罰が伴うことです。
二つ目は、人の存在意義を規定するがために正当性がなければなりません。
三つ目は、最も大切な要件で成果をつまり顧客満足という目的を達成する ことで、そのために正しく設計されようとしなければなりません。
ここで少し付け加えますが、 三つ目の要件で正しく設計されようとしなければなりませんといったのは、 正しく評価するというのは、神ならぬ身の人間がすることですなので不完 全です。 そのため正しい意図のもと、納得性がなければなりません。

アメリカは合理的で、業績が全ての評価基準と言われています。 日本でも誤解されてこの成果主義評価が導入されとんでもないことになっ てしまいました。
1993年に日本で始めて成果主義を導入した富士通ですが、成果がどの ような経過で実現するかの理解が“0”では仕方ありませんでした。
ご存知の方はよく知っていると思いますが、アメリカで20世紀最高の経 営者は、誰かと言うとGEのジャック・ウェルチです。
このジャック・ウェルチの評価基準は2つの要件から行います。 一つ目が価値観の共有で、もう一つが業績です。 興味深いのは業績がよかっても、価値観の共有がなければ評価しません。

GEの価値観は、非常にハードです。 企業の存続を保証するのは唯一顧客であり、従業員本人の雇用を保証する のも唯一顧客であるとします。
企業は従業員の雇用を保証しないと断言しています。 しかし、雇用が保証されるために全力で支援するとしています。 この考え方から、マネジャーの役割は従業員に企業方針と期待する役割を 明確に伝えて権限を委譲し、そしてストレッチ(背伸びをしないと届かな い高い)目標が達成できるよう支援するとします。
ジャック・ウェルチ自身も、自分の役割はチア・リーダーだとし方針を明 確したあとは予算を与え権限委譲し応援するだけだと言っています。
しかし、チアリーダー(マネジャー)の行う評価はハードです。 価値観を共有しないつまり部下を締め付けることで自分の業績をあげるだ けのボスは排除します。
ただし、これは従業員への温情主義の処置ではありません。 人材の能力を育て活用することができなければ業績は上がらないからです。

賞罰の意味

賞罰の意義から考えて行きます。 戦国時代でもっとも効果的に賞罰を活用したのは織田信長です。
それと同時に、自分の命を持ってその失敗を償わされたのが信長です。 織田信長は、組織整備から始めています。
地侍を城下に集めサラリーマン化して、人事評価を行いました。 その中では、元の出自にかかわら有能な人間は大抜擢し軍団長の地位を与 えました。 これこそ合理的な成果評価主義の典型です。
しかし、一方では評価で失策をしたのも信長です。

評価は、経営者の意思を示します。 佐久間信盛や林秀貞林を追放したのは、それ以後の経営者しての方針を明 らかにしたものです。
毛利の外交僧であった安国寺恵瓊が「高転びに転ぶ」と言った通りです。 評価は良かれ悪しかれ、経営者の心の内を示します。 問題の焦点は、何のために評価を行うかということになります。 間違った評価は、組織のあり方を歪めます。
成果の障害になるのなら、行わない方がはるかに賢明です。 評価を行うには、正しい構想が必要です。

賞罰は経営者が何を重視しているかの意志表示です。 その意思表示を通して、従業員をあるべき方向に導きます。 目的はお互いの協力の上で、自身の知恵と知識と能力を磨きあげて顧客に貢 献する従業員を支援し賞します。
その逆の行動を取る場合には罰するというシンプルなことです。 賞罰は経営を行うために手放してはいけない統制の道具です。
韓非子のなかにおもしろい逸話があります。 宋の子罕は、宋の君主に「刑罰は民の嫌がるものですから、私にお任せくだ さい」と言い刑罰権を移譲させました。 結果は、君主はついには子罕に脅迫されることになってしまったとあります。

マキャベリの君主論の一節のこんなことばがあります。 「君主は怖れられなければならないが、愛されない場合も、少なくとも憎ま れぬようにすべきである。」とあります。
企業の目的は顧客の満足と従業員の満足の実現です。 この目的に沿うのであれば、断固として罰の実施も行わなければなりません。 「ただし、憎まれるな。」とあるのは、それは、私情を挟むからです。 織田信長の「高転び」を予見されたのは兆候があったからです。
評価で最も大切なのは、納得性で、企業のミッションとビジョンと価値観が 日常的に明らかにされていなければなりません。
目的が明確で、経営者との意思疎通があれば納得できます。

評価のための準備

評価の実施には準備が必要です。 それは、とうぜん成果を実現させるための準備です。 成果の実現のための準備は3つです。
一つ目は成果実現に必要な基本活動の提示で、二つ目は活動活性化の仕組 みで、三つ目は人材育成のシステムの構築です。

山本五十六の名言「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてや らねば、人は動かじ。」続けて「話し合い、耳を傾け、承認し、任せてや らねば人は育たず。」「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、 人は実らず。」 貴重な経営資源でる人材は、限界まで育成し活用するのが経営です。
評価を行う目的は、マネジャーや従業員の行動を一つの方向に向けること ともう一つ成長段階をチェックしながら育てることにあります。 ドラッガーは成長の方法として自己目標管理の手法を提言しています。 果たすべき役割と目標を明示し本人の自己研鑽にまかせ、実行の成果につ いては上司とコミュニケーションしながら調整して行きます。

ここで重要なのは従業員本人の意欲に任せることです。 そして、もう一つの重要なことはマネジャーと成果をチェックしながら意 思疎通をはかり、個人に与えられたミッションの再確認を行うとともに、 客観的に達成度を確認することです。
その上で、マネジャーは従業員は達成に向けて必要な支援を行います。 攻めなければならない時、守らなければならない時、考えなければならな い時、断固行動しなければならない時と多様です。

人それぞれの得意なことについて知悉したうえで、役割分担が必要です。 チーム作りも効果を発揮する組み合わせが必要です。 適材適所でなければ、個人もチームもより以上の力を発揮するできません。 また、業務の実行については方針の設計から参画し、意思が反映されると ともにチャレンジングな目標設定が効果的です。
このうえで、評価を行います。

ただし、この評価についてはGEのジャック・ウェルチの行った活性化カ ーブは非常に強烈と言えます。
上位20%のAクラスは、中位70%の2~3倍の昇給で、下位10%に 至っては昇給0で、これが毎年行われます。
最後に何故行うかをかんがえます。 それは、より良くなるための活性化のエネルギーを維持するためです