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39回目 マーケティングとは何ですか

不思議な発明家のスタンス

発明家の友達がいて、いろいろの面白い話が聞けました。 そこから、改めてマーケティングのあり方が再発見されます。
発明といえばエジソンが思い出され、何か画期的な特許を取ればバラ色の 人生が開かれると思っておられる方が多いようです。 そのなかでも多いケースは、ちょっとしたアイディアや自分の専門分野で の思い付きの夢が拡大して行くケースです。
以外に、多っかたのがご飯をよそおう「しゃもじ」にお米がくっつかない ようにする工夫の類です。 一般的な経緯としては、アイディアの思いがつのるとその吹聴にはじまっ てその実現化をめざします。
実現化の過程に入ると特許の取得や商品化へと思いが動いて、特許の取得 の困難さとまとまった資金が必要なことに気付かされます。 そこで、思いつくのは「これは画期的なアイディアなので、協力してくれ る人がいるはずだ」となり協力者を探します。
なかにはそこそこのアイディアもるあるものの、試作品のないようなもの に関心を示してくれる企業がないのでそこで話は終わってしまいます。 とは言え、その中の何人かの方はその夢を完成形まで持っていかれ特許を 取得し試作品までつくられます。
そのなかでも、びっくりするのは永久運動のアイディアを形にするケース です。
あり得ないアイディアで試作品まで創り上げてしまいます。 特許も実際に取得されます。
ただし、発明家は永久運動だと主張されているのが不思議ですが、特許自 身はまったく永久運動とは関係なく、従来の類似がないアイディアが特許 の対象として認められたということのようです。
それにしても、すごい研鑽と忍耐の賜物です。 しかし、この「永久運動」と称する機械の使用目的や効用は全く考えられ ていないのに唖然とさせられます。
お客様不在の発明したあとで一儲けできると考えているのがその結末です。 話の前提が長々となりましたが、顧客に受け入れられて現実的に購入して もらえるようしてはじめて「商品」となります。 マネジメントの開祖である「ドラッガー」は、マーケティングは「顧客か らスタート」すると言っています。
発明で成功するのは、顧客の欲求にマッチした時のみです。 チキンラーメンやカップラーメンは、安藤百福さんの感性がこのことをキ ャッチしてつくられたものです。
スティーブ・ジョブズのiPhoneも機能・操作性・デザインが顧客の感性に 響いたからの大成功です。

マーケティングの手法

年配の方だったらかろうじてご存知でしょうが、思いでのヒット商品に 「ダッコちゃん」や「フラフープ」があります。 フラフープのヒットは理解できましたが、「ダッコちゃん」てなんなのと 感じていました。
「ダッコちゃん」について少し考えてみます。 これも古いヒット商品ですが、「ビックリマンチョコ」というものがあり ました。 この二つのヒットと、マーケティングを考えてみます。
「ダッコちゃん」の製造元は宝ビニール工業所(現:タカラトミー)で発 売元はツクダ屋玩具でした。 この人形をデザインしたのが武蔵野美術大学に通っていた社員の大木紀元 氏だそうです。
大木氏がこの人形をつくったのは、センスはあったのでしょうがまったく の「出合いがしらのホームラン」で、市場調査などはなかったでしょう。 同様なものに「ビックリマンチョコ」があり、販売元はロッテで開発者は 反後四郎氏でその独特のストリー性が商品価値となっています。
マーケティングというと、一般に顧客の欲求を知るということでマーケテ ィング調査をイメージします。 たしかに調査は必要ですが、人間の欲求は摩訶不思議で科学的な調査だけ では計り難いレベルにあります。
「ビックリマンチョコ」の開発者の物語性は、なんとなくの時代に対する 嗅覚はあったでしょうが独自な世界をベースにしています。 顧客の欲求に合わせるというより、思わずしてしたことが人の深層の物語 欲求をキャッチした模様です。
一般の商品開発でも、通りいっぺんの調査を超えた顧客の欲求の読取が必 要です。 一流のマーケッターは絶えまず、日常の人通りの中に立ちまた住まいして その中からささいな気配を嗅ぎ分けてアイディアを見つめて行きます。
人間の欲求は現場にあります。 あるときは些細な調査で済まします。 居酒屋のメニュー開発なども簡単に行い、それなりの成果を得ることもあ るようです。
女性社員の生な声を聴き、そしして試作品をつくりまた意見を聞きます。 セブンイレブンのお弁当や惣菜等の最後のチェックの段階は、どのように 行うかも興味深い市場調査です。 社員が作った自信作を経営者陣が試食をします。 それでOKであれば商品化します。
もっとも今は「東京発」では限界があるので、地域の味の好みまで踏み込 んで地域の人のチェックにより商品開発が始まっているようです。 工業製品にもマーケティング戦略があります。
一般に工業製品の製造目的は合理性が全てであるように思われますが、 「おもしろおかしく」が社是の堀場製作所では、測定機器のデザインをお 客さまに感動を与えること、分析業務をより快適にすることを目的に行っ ているそうです。
マーケティングは生ものです。 人がミッション(使命)やドメイン(領域)を明確にしたうえで、とにか く生な人の欲求のありかをつかむことが求められます。 結果的に言うと答えを出すために限りなく探求してタブーなく試みること のようです。

感動マーケティング

顧客の欲求を満たすためのすべての活動がマーケティングの活動領域です。 人の欲求満足のあり方や水準は、その場面や状況によって異なりますし欲 求そのものの属性により、その内容も異なります。
例えば、一番分かりやすいのは砂漠での水です。 一人ぼっちでいて、何の装備もないときに喉が乾ききったとします。 その時には「濁りきった水」でも命の水になります。 しかし、装備万端のときは冷え切ったミネラル・ウォターでなければ満足 できないこともあるでしょう。
欲求そのものの分析をします。 欲求には3つのあり方があります。
1つは欠けると不満足になる欲求です。
2つめは、あるのが当然の欲求満足です。
3つめが、その出会いがあると感動する欲求満足です。
1つめと2つめの欲求に対しては、マニュアル化し徹底的に標準化し訓練 しなければなりません。 3つめは、絶えず新たに対応しなければならないか、場合によっては標準 化でき得ない欲求レベルです。
これら3つの欲求の満足をマネジメントしなければなりません。 特に現在の顧客の欲する欲求レベルは非常に高くなっています。 マニュアル化によっての心地良さだけでは、競争に勝てなくなることが起 こりつつあると言えます。
マクドナルドやケンタッキーフライドチキンの充実したQSCは基本です。 ※Qとは品質(Quality)Sはサービス(Service)Cは衛生(Cleanliness) 基本レベルの確保にも、適切なミッションの提示、人事システムの設計、 そしてクレーム処理活動が必要です。
クレーム処理活動は、貴重なマーケティング向上の源泉です。 クレームがある間は、お客様はあきらめていません。 クレームすらしてくれなくなったとき見捨てられます。
食中毒で問題を起こした「牛角」ですが、評判を落とした面もありますが、 その創業時には会計の際に300円の割り引きでクレームを言ってもらい改 善していって、たちまち繁盛店となったという逸話もあります。
「感動マーケティング」には、イノベーションと人(心)のマネジメント活 動が行われなければなりません。 ユニクロでは、人(心)のマネジメント活動では一部マイナス評価がありま すが、そのイノベーション力は驚異的です。 企画から製造、小売までを一貫して行うことでデザイン性のある格安の商品 を提供し、さらに東レと共同開発した「ヒートテック」では繊維自体の発熱 効果の着心地でさらなる満足を得ています。
現在のマーケティングの進化は、ディズニーランドの感動のエンターテイメ ントやリッツカールトンの「クレド」では、人(心)のマネジメントを駆使 した感動マネジメントが行われています。