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6回目 組織と仕組みと心(トップ・マネジメントの知恵)

トップマネジメントに必要なのは「考え方」

京セラの稲盛さんに経営を教えた人はいません。ほとんど独学で、「人間として正しいことは何なのか」を基準にして考え てこられたようです。
そんななかでも経営の師匠がいました。 それが松下幸之助さんで、「ダム経営」の「健全な経営を行うために、資金、人材、技術等のダムをつくり余裕のある経営をして行こう」という話で、その方法を聞かれたとき「まず願うことですな。願わないとできませんな」という返答に、ハタと心打たれたと言っておられます。

経営を行う場合、ベストプラクティス(最も良いものを真似る)という方 法は確かにありますが。そのエッセンスとなると、自身の「気付き」意外にありません。
松下幸之助さんの言う「そう願うことですな」が大きな答えのようです。 それと、幸之助さんがよく言われる「血の小便が出るまで考えたことがありますか」という問いかけです。
物まねは大いに大切なことですが、そこからはあるべきことに対するあるべき「気付き」ができるかどうか。 経営は「願うこと」から始まるということに対する稲盛さんの感動がすごいことで、それが意味するものが経営のエッセンと言えます。 さらに、気付いてからご自身で「考えて、考えて、考えてこきた」から、今日の京セラがあります。

経営にとって「心」とは何でしょうか

事業とは「人」が、決められた目的のために行う活動です。経営の中心は「人」です。
人には「心」があり、「感情」があります。人は納得したとき、最大の「力」を発揮します。 この人の「心」を松下幸之助さんも稲盛さんもよく知っておられます。
パナソニックには「遵奉すべき七精神」があります。「宗教は人々の悩みを救う聖なる仕事である。それに対して、事業経営も 人間生活に必要な物資を生産提供する聖なる仕事。そこに事業経営の真の 使命がある」という考え方もとにして制定されています。

京セラには、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」という経営理念があり、 さらに経営哲学のエッセンスを箇条書きにまとめられて全従業員に「京セラフィロソフィ手帳」を配付されています。
経営理念は多くの会社で掲げられています。 パナソニックと京セラで違うのは、パナソニックが社名を変更した時、経営者が「七精神」はこれからも経営の核であることを訴え、 京セラが「京セラフィロソフィ手帳」を社員に絶えず携帯させ、翻訳もされ海外の子会社の配布されています。
松下幸之助さんは「松下電器は何をつくっていますか」と問われたとき、「私の会社は、人をつくっています」いった話は有名です。

組織と仕組み

前回に解説させていただいたように松下電器が事業部制組織とマトリックス組織を、京セラは「アメーバ」組織 という知られていなかった組織形態を経営の根幹に据えました。
これらの組織形態の底に流れているのは「人のやる気」を引き出すことことです。 人は、任せられなければ責任を負いません。 命令を受けるだけの仕事では、作業は行いますがあえて工夫して仕事を行いません。

パンソニックの「事業部制」では、事業部が単独の利益責任を負います。それと、経営権限が委譲されます。 「事業部制」はいったん廃止されましたが、また復活しました。そのことを考えると、経営と人の「心」との関わりが垣間見えます。
「アメーバ」組織では、各部門・各工程を経営(責任)単位として分割し自己裁量権と同時に利益責任を負います。
2つの組織形態については、マニュアルにも教科書に出ていません。経営者の「血の小便」から生まれた組織のイノベーション(革新)です。
さらに、この組織が目的を実現できる仕掛けがあります。 パンソニックでは、本部の経理部門が各事業部の業績を月次決算で即時チェックするとともに利益が実現できるように支援します。 この制度はマネした企業があるもののうまく行かなかった制度です。
「アメーバ」組織では、各アメーバの共通評価基準として時間当たり利益で採算をチェックするようにしています。 企業経営は、「心」のマネジメントを根幹とし、利益を生み出す組織と仕掛けをきっちりと構築されています。