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16回目 ピラミッド組織では勝てない

組織は成果を生むために構築する

「組織は戦略に従う」という命題をアルフレッド・チャンドラーという学者が となえています。
組織はいったん形成されると経営者の意向とは異なって自動運動を行います。
組織の成員の目的は「自分の欲求を満たす」ことです。「戦略」により統制しない「組織」は、人の利害バ ランスによって運営されて、やがては唯一の組織の存続を保証する「顧客の支持」が失われ崩壊します。
「戦略」は「顧客の満足」をいかに一番として生産的に実現させるかの総合的な方策です。
戦略の目的は、やはり「ドラッカー」の言うところの企業の2基本機能である「マーケティング」と「イノ ベーション」の効果的な実現です。
噛み砕いてこの二つを解説すると、「マーケティング」は「顧客の満足を実現 させること」で「イノベーション」は変化・競争と関連し「より以上に顧客の 満足を実現させること」です。

企業が存続できるのは、この2つの基本機能を実現できた時のみです。
そのため複数の人が集まって「組織化」し仕事を行う時、とうぜんに組織構築 原理は基本機能つまり「戦略」より構築されなければなりません。
ところが一般的に組織となると、教科書に書いてある「ピラミッド組織」が形 作られ官僚制が入り込んで膠着して行きます。
ここまで話をすすめると、そうしたらどんな組織をつくったらよいのかということになります。
その答えは、企業の戦略つまり「顧客の満足」に対してどのように実現させるかから出発しなければならな いことが見えてきます。
組織形態は、個々の企業の個々の事情によって異なり求めらるものも異なります。

手掛かりは、顧客の満足を実現させる「効用」が基本的な指針となります。 「効用」の実現を目的に強みを意識し、その過程および関係を「プロセス」と してまとめ具体化させ組織を構築して行きます。
組織は個別のもので、また環境の変化により変化させなければならないものです。 そのように確信し成果実現のために構想しなければ、自身の将来を自身でコント ロールできなくなります。
個々の企業の目的・目標を無視した組織形態は、最初から競争を放棄したことに なりやがては「石化」してしまいます。
「石化」から企業を守るのためには自分で考え、環境変化の兆しを先取りしそれ に備えるコンセプトを主題として再構築・再編成することです。 絶えず考てこそ、企業は勝てるチャンスを留保されることになります。

日本企業の組織変革

組織変革の目的は「効用」を創り上げるために機能させることです。
日本企業でも業績を上げている企業はたくさんありますが、成果の実現の鍵を握 るのは社員の「本気度」で、それをどのようにつくりあげるかにかかっています。
働く人の「本気度」を高める方策は2つです。
一つはミッション(使命)で、企業が示す経営理念に共感できたときにこそ働くことに意欲がもたらされま す。 もう一つは「意思決定への参画」と「権限移譲」です。
人は自分が意思決定に参画し、その意思決定の実現を自分の責任において実現されるとき「やり甲斐」が高 まります。
「本気度」を高める組織変革の基本は、働く人が共感できる「経営理念」を目指す活動に、私の意思が取り 入れられかつ参画し実現のために「権限と責任」の委譲がなされ「責任」を持たされた時です。
チャレンジしたい活動に、自分の意思が活かさせ実行できるときです。

3つの事例
<パナソニック(旧松下電器)の事例>
事業部制 その目的を「自主責任経営の徹底」と「経営者の育成」の2つであると指摘しています。
松下幸之助さんは、事業部制を導入した経緯を「自分が病弱あったから」と述べています。そして「結果的 にこのことがよかった。自分が健康であればここまでには至らなかった」のような感慨も述べられています。
事業部制は中村改革でいったん廃止されましたが、問題点を整理された形で今また復活されています。

<京セラの事例>
アメーバ組織は名誉会長の稲盛さんが構想され実施された制度です。
稲盛さんは、社員の全員が業績に責任を持って経営者と同じ気持ちになるにはどうしたらよいかを考え続け ました。 そこで思い至ったのが「アメーバ組織」です。
アメーバ組織では、「アメーバ組織」となる要件を明確にします。
1.「明確な収入が存在し、かつその収入を得るために要した費用を算出できること」
2.「ビジネスとして完結する単位となること」
3.「会社全体の目的、方針を遂行できるように分割すること」
この要件を満たす事業単位を独立採算組織となります。
この制度のにより「市場に直結した部門別採算制度の確立 」 「経営者意識を持つ人材の育成」「全員参加経営の実現 」が実現されて高い業績へと結びついています。

<ホンダの技術研究所>
ホンダの技術研究所はホンダ技研とは独立した組織で、ホンダ本体から売上高の5%の委託研究費が支払われ て運営されていると言われています。
創設の経緯は、当時本田技研工業専務であった藤沢武夫さんの「本社から分離することで、目先の業績に左右 されない自由な研究環境が実現できる」「ピラミッド型組織と異なるフラットな組織の実現も容易に行え、研 究員に対する待遇も改善できる」と考えたことがきっかけです。
スペシャリストたるエキスパートは「管理」には馴染じみません。 そのため「エキスパート」を本社機能から独立され、自由に研究に没頭できる環境をつくるという考えのもと にできた制度です。 その結果、本田宗一郎引退後も「CVCCエンジン」やロボットの「アシモ」のような 画期的な技術開発が継続して実現されるに至っています。
付け加えて述べますが、この制度すら巨大になると階層化がおこっていまします。フラットであってこそ創造 性がたかまります。
そのため、研究グループの再構成し再フラットをすすめています。組織はたえずチェックしなければ、官僚化 の餌食になりムダな作業に追われることになります。
成果を生むのは手続きや作業ではなく、顧客に貢献にかかわる現場の仕事のみです。

GE(ゼネラル・エレクトリック)の組織改革

GE(ゼネラル・エレクトリック)はアメリカの超優良企業です。GEの過去例をみ ない組織改革を行ったのは前会長のジャック・ウェルチです。
組織改革を行ったのは、売上、利益とも安定していた1980年代のことで、衰退の予兆を先取りしてのことです。 この予兆への読みは的を得て、他の中堅企業は軒並み衰退の道をたどるなか稀な企業として好業績を持続させました。

<選択と集中> 変革の第一歩のキーワードは、シェア「ナンバー1かナンバー2」です。シェア「ナンバー1かナンバ ー2」でない事業は、「強み」を持たず顧客の支持の少ない事業でやがて競争に負け市場より撤退しな ければならない事業と考えました。
これらの事業については、自力で「ナンバー1かナンバー2」になることができなければ売却するか、 閉鎖することになりました。
これが「ダウンサイジング」「リストラクチャリング」と呼ばれる組織改革で、100億ドル相当分の 事業を売却し、190億ドル分の事業を買収しました。そして、買収金額が多かったにもかかわらず従 業員を41万人から23万人に削減させました。
社員の不安の中で、肥大した企業から筋肉質の企業への改造がすすめられました。

<障害の排除>
変革の第二歩は、社員を意思決定に参画させる権限の委譲し自信を取り戻すことです。企業が顧客に受け 入れられるのは、接点を持つ現場が生き生きと活動し成果を実現するからです。
現場の活動力の育成こそが、業績を伸ばす手法で組織改革もここに焦点が当てられます。
階層削減:9階層から意思決定とコミュニケーションが円滑に機能するよう4~6階層に削減
境界の排除:ベスト・プラクティスを学び共有する最高幹部によるCECミーティングの実施、全社・全従業員 を巻き込んだ<ワークアウト>の実施官僚制の排斥:市場と顧客との関係に集中できるように独立採算センターを構築

<ワークアウト>
「ワークアウト」は“解決”“解消”と訳されます。その「ワークアウト」とは、現場の全従業員の頭脳を活用 する手法です。現場社員8~10人をグループとし、コーディネーターの支援のもとにてタウンミーティング式に 4つの観点(承認、報告、会議、評価)などで障害になっていることについて話し合いが行われます。
参加者は問題点を列挙し解決策を2日間話し合い結論をだし、3日目の最終日にマネージャーを入れて1つひとつ の提案に対してその場で回答するように求められます。
このセッションは第3者であるファシリテター(コーディネーター)の立会いの下に行われるので、公平性が保た れています。
その実行においては、参加者全員に提案についてメモ書きが渡され話し合いの内容が正確に反映されているか確認 されます。そして提案者が「チャンピオン」となり責任を持って提案の実行がなされます。
「ワークアウト」の実施はGE内にあった官僚意識の払拭し、従業員に自身とやる気をもたらし、そして業績の改善 をもたらすことになりました。