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21回目 中堅企業の条件

メガ・トレンドかニッチ市場か

中堅企業になるには独自な「強み」を持っていることが前提条件になりますが、そ の方向性については2通りがあります。
それはイメージとしては、ノーベル賞を受賞することと人間国宝への道を歩むこと に対比させられます。 ここでノーベル賞を受賞するための戦略を少し考察します。 一つ目のポイントは受賞できるテーマを選択することです。
iPS細胞の山中教授にしろ青色LEDの赤崎終身教授、天野教授、中村教授にし ろ、たまたまか始めからかねらったかは別にしてテーマの選択が賞に値するものであったことがポイントです。
賞は時代の要求するテーマと合致してこそ対象とされます。 もう一つの戦略のポイントについて、iPS細胞については山中教授の論文発表と同時期に少し後れて同じ内容の論文提 出がなされています。
少しの遅れですが2番のモノにはなんの栄誉も与えられません。富士山は日本一高い山だと知られていますが、2番目に高い山 を知る人はほとんどいません。

ノーベル賞は、大企業の成立にも例えられます。 誰も認識していないかもしくは少数の人しか興味を持っていないメガ・トレンドに 始めから賭けて惚れて込んで挑戦することが基本条件です。
古今東西この条件をはずして中堅企業になったものはありません。 古くは三菱の郵船事業、東芝は電球、日立はモーターで、少し下ってパナソニックは 電化製品に、ソニーはAV機器、トヨタ、ホンダは自動車、京セラはセラミックそし てイトーヨーカドーやイオンは大型量販店、さらにソフトバンクや楽天、ユニクロな どが連なってゆきます。
これらすべて時代が渇望する欲求を満たすメガ・トレンドに賭けて成功した企業です。 もう一つの中堅企業への道は、独自の人間国宝並の「強み」卓越した一番の技を持っ ていることが成功の条件になります。
人間国宝になるためには、独自な道を選び精進に精進を重ねて他の追随を許さない名 人の技を磨きぬくことです。
事業の選択については、ノーベル賞とは違った戦略があります。 あえて、メガ・トレンドを避けてすき間の市場を住処とします。

人間国宝になるためには好きで好きで仕方ないか、家のしがらみで逃れることができ ないといった強い動機が必要です。 これと同じで、企業の生業を国宝級にするためにはこの道一筋の汗と努力の結晶が必 要です。

この人間国宝級になる戦略の第一のポイントは、この道においての第一人者になるこ とです。そしてこちらの方が大切かもしれませんが、おのれの技を喜んでもらえる市場を何と しても見つけ出すことです。
市場があってこそはじめてビジネスチャンスが生まれます。この人間国宝級には、あまり知られていない 好業績の中小企業が数多くあります。規模は中くらいであるものの日本の製造基盤の核をなしています。

人間国宝になる戦略について少し補足します。 この戦略についてイギリスのエンジニアであったランチェスターが、中小中堅企業の 戦略について取りうる戦略は「差別化戦略」であると述べています。
そして具体的な戦略としては、スキマ市場やニッチ市場戦略を対象ととし、資源を集中 させ、顧客ニーズの把握や顧客へのコミュニケーション強化を図り、一点集中をはか る戦略が必要であるとしています。
どちらの方向性についても、「成果」に結びつかせるには基本法則があります。 それは、企業が提供する商品やサービスを通しての「効用」が人の持つ欲求や願望を 満たさなければならないということです。
つまり顧客や社会が企業に期待するのはただ一つで、「効用」の有効性です。 欲求や願望を満たしてくれるかどうかということにかかっており、このことに対する 認識が不足していると企業の成長はおろか存続もはたしえないということになります。

中堅大企業への条件と要件と方策

中堅大企業に成長するには厳しい要件と方策と条件をくぐり抜けなければなりません。 その第一は、企業が実現させようとする「効用」が技術的に可能となる時代の“大き なうねり”のなかにあることです。
第二には、経営者が大きな夢があり強い忍耐と意志力を持っていることです。 これが基本的な要件です。
今、チャレンジの真っただ中にあるソフトバンクの孫さんについて見ると、 「情報革命で人々を幸せに」を理念とし、企業創業の始めから「豆腐を数えるように 一丁二丁(一兆二兆)を扱う企業になる」と大ぼらを吹いて実現させています。 大企業になった創業者に共通するのは、未知なるトレンドへの挑戦と壮大な夢を持っ ていることです。
松下幸之助さんは電気の時代を予感して創業し、「25年を1節とし、10節繰り返し 250年後に楽土の建設を達成しよう」という壮大な構想を述べています。 本田宗一郎さんは車が好きで好きで、創業して間もない始めのころから「世界一にな る」を壮語しています。
いずれも時代が要求する「欲求」に先駆けて創業し、壮大な「ビジョン」をイメージ しその実現に向かって成功するまでチャレンジし続けています。
ここで大事なポイントになるのは、「時代が求める欲求」があるかどうかということ です。
これが成果を実現させるための基本要件です。 いくら優秀な経営者であろうとも、この外的条件がなければ小さな成功は実現できて も大企業に成長することは不可能です。 大企業への道は、時代が用意していると言えます。
第2のポイントは、大きな事業は一人では実現できないということです。 大きな事業を完成させ持続するには優秀な人間の参加と強力なエネルギーの結集が必 要です。
松下幸之助さんの言う「松下電器は人を作る会社です。あわせて電気製品を作ってい ます。」や京セラの理念「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社 会の進歩発展に貢献すること。」やホンダの「The Power of Dreams」など人にかんし ての強いメッセージがあり、これが強みを創りだす企業文化になっています。
ビジネスは、安直な合理性や軽薄な科学的な思考で成果を実現できません。 企業としての壮大な人間社会に対する夢の実現と、深い人間理解にもとづいて働く人 の夢の実現を統合できたときに強い中堅企業が形成されます。