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27回目 売れる商品の考察

商品の寿命(ライフサイクル)

売れる商品とは何か、それはお客さんの欲求を満たす商品です。 そうしたらこの条件を備えたら売れるのかというと、少し事情は違いま す。
売れる商品であるというのは第一条件です。それからが続いて、まず知ってもらわなければなりません。 そして納得してもらわなければなりません。 その上で売れる流通ルートを通して、売れる場所になければなりません。
さらに加えて考えなければならないのは、商品には旬というものがあるということです。 このことを理解していなければ、現実に行わなければ成果はでません。 逆に言うとこのことを骨の髄まで浸透していると強い経営ができます。

売れる商品について解説を加えます。 実は、商品自身が売れるのではなく、人の欲求を満たす「効用」が売れ るのです。
だから売る側はこのことを理解して、よいよい「効用」の実現をはから なければなりません。 分かりやすい例としてはテレビ受信機があります。 今は4Kや3Dなどと進化していますが、 始めは貴重な白黒テレビから憧れのカラーテレビに移行し、さらにハイ ビジョン、4Kへと続いてきました。
もちろん、テレビほど分かりやすくなくとも他の電化製品についても同 じで、これが普遍的な「商品寿命のさだめ」です。 商品には命(ライフサイクル)があります。
このことは分かっているようで、なかなか理解しにくい現実でもあります。 世界の名だたる企業でさえ失敗して、とんでもない事態に追い込まれる ます。
シャープの液晶がまさにその渦中にあります。 もういらなくなった製品ではありませんが、明らかに旬の過ぎた商品で 魅力いっぱいのヒット商品ではなくなっています。

商品そのものということではないけれども、大塚家具のお家騒動も旬に ついての諍いです。
業績が低下した商売のあり方について、それをまだ守ろうとする父親と なんとか変革しようとする娘の闘いです。
マクドナルドもそうです。 衛生安全管理という一側面であるものの事業スタイル・ライフサイクル への対策不足が伺えます。
人間の求める基本「効用」には変化はありませんが、それを満たす商品 の実体はよりよいものを目指して変化(カイゼン、変革)しなければな りません。それを行わないと陳腐化は紛れません。
コマの回転の原理と同じで、止まれば倒れます。 その真理を企業自身の考えとして、活動し続けてこそ倒れない経営が可 能となります。
顧客の求める「効用」を軸として自身の「強み」を注ぎこむことです。 強みがなければ「思い」と「情熱」と「知恵」でもって、強みをつくり あげることです。

「強み」のつくり込み

「こんなに良い商品なのだから売れないのはおかしい」または「何で売れ なくなったのだろう」と言われる経営者がおられます。 もう一つは「私とこには何の強みもないんや、従業員もええのがおらんし」 と言う経営者のことばもときどき聞きます。
売れないということについては、商品の売れる条件に対して何かが欠落し ているからです。 隠れたヒット商品に「ウタマロ石けん」という洗濯石鹸があります。 もとは注文を受けて外注用としてつくられた石鹸でした。
一旦は注文主が廃業したこともあり廃番になりかかりましたが、多くの顧 客から廃番にしないで欲しいという声があり廃番を免れました。
この石鹸は洗濯石鹸として販売された商品だったのですが、大手メーカー の洗剤石鹸に取って代わられ販売が縮小しました。 しかし、思わぬ「効用」がありました。 主婦が頑固な汚れの部分洗い用として使っていたのです。
商品の真の価値は、顧客自身がもっともよく知っています。 この石鹸の製造元の株式会社東邦は、この「顧客の声」に耳を傾け部分洗 い用として販売したところ大いにヒットして、大増産のヒット商品に変身 させました。
商品の「効用」は生産者がつくりあげなければなりませんが、それを商品 とするには「顧客の望む効用」として販売しなければなりません。 「ウタマロ石けん」の場合、メーカーの高い商品開発技術がもちろんバッ クボーンにありますが、顧客の「頑固汚れの部分洗い」という要望にフィ ットしたことが大きな要因でした。
そうしたら「強み」がなければ事業はできないのか、「強み」がない企業 はどうすれよいのかという疑問か生まれます。 答えは「強み」のない企業にはチャンスはありません。 しかし、「強み」はつくり上げられたものです。
痛くない注射針があります。 この注射針は岡野工業株式会社の岡野社長がつくったもので、この社長 (本人は代表社員と称している)には、ユニークなこだわりがあります。
それは、技術的に難しくて人ができない仕事を選んでやっていくことと いうことです。岡野社長はこのこだわりでやってきて、そして「強み」をつくりました。

「強み」づくりの源流

「強み」は創り上げることができます。しかし、もちろん一筋縄の思いでは創り 上げることはできません。現在のエクセレント・カンパニー(優良企業)の「強み」も、 そのぞれの核になる経営者の「強い思い」とチャレンジ精神で創り上げられてきたものです。
生き残らなければならないという思いで、世界的な技術を開発した企業は たくさんあります。優良企業には、日常化されて企業文化になっている健全な「危機意識」があります。 その一例に「セイコー」の「クォーツ時計の開発」あります。
「クォーツ技術の開発」を実現したのはセイコーグループの後発の諏訪精 工舎です。諏訪精工舎は現在のセイコー・エプソンで、もともとは第二精工舎が戦時 の疎開で諏訪に移りのちに現地企業と合併し設立された会社です。
諏訪市はもともと製糸業で賑わった土地柄です。 しかし、製糸業が衰退するなかでそれに続く産業がなくそこの第二精工舎 が疎開してきたのです。諏訪市の住民にとっては、ここにすがることで道が開けます。
諏訪精工舎の「クォーツ時計の開発」は、親会社から遠く離れた立地にあるにもかかわらず、また後発で 技術力も劣っているにもかかわらずの快挙です。
それは、会社の危機感というよりも、その土地に住む人たちの危機意識によってなされたと考えられます。
危機感は「強み」をつくりあげる源流になります。 そこにモノづくりの歓びが加わるとさらに「強さ」が生まれます。
自動車業界で見ると、トヨタにはメイン・バンクから見捨てられるという できごとがありました。ホンダも、その成長期の1950年代の会社破綻の時期がありました。 ニッサンにも、「ゴーン革命」でなっと崩壊を免れました。
みんな危機を通り抜けて、危機感を土台として事業を行っています。危機感こそが「強み」の源泉となっています。
最初から「強み」のある企業はありません。そして、いつも安定している企業はありません。 安定しているとしたら、絶えず上を目指して活動し続けているからです。
も一つ「強み」づくりの源泉があります。 それは、チャレンジすることを奨励することです。 トヨタは豊田佐吉、豊田喜一郎のはじめから、モノづくりが大好きな企業です。
ホンダは本田宗一郎にはじまる創業から「車バカ」が主体の会社です。 「強み」のつくり込みは、「背水の陣」です。
逃げ場のない環境の中で、決死の覚悟で敵に挑みそのなかで活路を見出し 勝利を得たときの感動・感激で強い軍団がつくられて行きます。 その連続をマネジメントできたとき「強み」のあるエクセレント・カンパ ニーが形作られて行きます。