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24回目 歴史から学ぶ「管理のあり方」

中国の歴史上の管理の在り方

中国は易姓革命という考えがあります。 天は己に成り代わって王朝に地上を治めさせるが、徳を失った現在の王朝に天が 見切りをつけたとき革命が起きるとされており王朝が入れ替わります。 その考えもあり、多くの管理法の異なる王朝が盛衰してきました。
適切に管理を行うには、「何をしなければならないか」「何が望まれるか」とい った方向性を示す「法」とその法の円滑な運用を実現させるための「賞・罰」が 必要です。
中国の統治方法で代表的なものに「徳治」と「法治」があります。 「徳治」は聖人の徳をもって統治しようとするもので、漢の武帝が「儒教」を官 学として採用し行われたものです。 「儒教」は徳川幕府でも朱子学を官学したように秩序を保つのは効果があります。 とは言え、その運用面をみると「法治」により統治が行われています。
結論からいうと組織の運営は、法の下に賞罰をいかに行うか効果的に管理を行うか ということになります。
中国で、「法治」の統治により最初の覇者になったのは始皇帝の「秦」です。 秦が「法治」を行ったのは、始皇帝から遡ること6代前の孝公の頃からです。 孝公に「法治主義」を説いたのは衛の公族出身である商鞅で、最初、帝の道を説き、 次に王の道を説き反応がないので、次に覇者の道を説くと孝公は熱心ににじり寄るほ どに関心を示したという歴史がありました。
王道と覇道についておもしろいエピソードがあります。 スパーマーケットの勃興の頃、テレビの値引き販売をめぐって松下幸之助さんがダイ エーの中内功さんとの間の話で「もう覇道はやめて、王道を歩むことを考えたらどう か」と諭したという出来事がありました。
勝つためには覇道を歩むことが求められますが、しかし覇道だけでは組織が存続し続 けるかということでしょう。
話を戻すと、秦が取った道は覇者の道でした。 最初、変法(へんぽう)と呼ばれる国政改革を断行されました。
その一つが徳川幕府も行った相互監視システムの「什伍の連座制」です。 その他にも「戦争での功績には爵位を以て報いる」「戦功の無い者はその爵位を降下す る」「男子は農業、女子は紡績などの家庭内手工業に励み、成績がよい者は税を免除す る」「法令を社会規範の要点とする」といったものです。
これらの変法は、運用によっては現在の経営の模範になり得るものです。 管理が効果を発揮するのは「賞・罰」でもって経営者の意思を明確にすることです。 論語に「信なくば立たず」という言がありますが、政治や経営は信頼されなければ成り 立ちません。 「賞・罰」は実行されてこそ信を得られます。
賞の信頼にエピソードがあります。 「法家」の商鞅は、民衆が法をしっかりと執行することを信用させるために「8メート ルにおよぶ長さの木を南門から北門に移せば十金を与える」と布告しました。しかし民 衆はこれを怪しんで行わず、そこで賞金を五十金にしました。 するとある人物が木を北門に移したので、これに布告通りに五十金を与えました。
罰については峻厳でした。 太子(後の恵文王)の傅(後見役)である公子虔が法を破った時、これを処罰する事を 孝公に求め、鼻削ぎの刑に処し、また教育係の公孫賈の額への黥刑に処し、さらにの太 子の侍従を死刑に処しました。
この後は全ての人が法を守り、秦は興隆して戦国の覇者の道を駆け上ることになりました。

管理の要諦について

管理の目的は、成果を達成するために人の行動を一定の方向に向かわせるとともに活力 を与えることです。 中国の歴史を見るまでもなく、管理については古今東西その原理は共通しています。 しかし現代では、表立っては取り入れにくい手段もありますが、基本は全く同じと言え ます。
今という時代は、その競争のレベルが「グローバル化」「変化の速さ」「成熟化」さらに 「情報化」といった要素がくわわって異質で激しい環境にあります。 そのなかでも、急激に成長を実現している企業があります。
急激に成長するためにとられる手法は、やはり「覇者」の管理方法でしょう。 アメリカでは国民性がはっきりしているので、この管理方法が有効に機能されています。
「覇道」でもっとも成功したアメリカの企業はGEで、前会長のジャック・ウェルチの勝 つための戦略で超優良企業の地位を得ました。 代表的な政策として、「リストラクチャリング(組織改革)」や「選択と集中」や「成 果主義の徹底」です。 不採算部門の閉鎖と人材の削減が行われました。
ただ、「勝つための戦略」には「知恵の戦略」も加わっています。 それは「知識」の重視つまり人間能力の引出しとその活用そして成長部門の獲得です。 思い切った不採算部門の削減・閉鎖と同じくして人材育成と価値観の共有のための企業内 大学ともいえる研修機関の充実化、また「ワークアウト」というすべての人をまきこんだ 「知識」の源泉の創出があります。
日本では、核心のない「リストラクチャリング(組織改革)」「成果主義」が模倣されま した。 その結果、元々の日本の強みをなす「和」の精神である協調、協力、所属意識が破壊され てしまいマイナス効果が出ています。 弱さを、安易に上辺の経営手法だけで修正しようとした知恵のない無責任な経営には混乱 があるだけです。
GEでは強みにない事業へは経営資源を配分せず、1番か2番である強みが生かせる事業 へのみ集中します。 そしてその時々の勝つための手法、グローバル化、IT化、サービス、ファイナンスなど チャンスのある政策と手法を末端まで周知徹底し明確にします。
また、共有されるべき価値観、知識の重視、ストレッチ(永久的な大幅な生産性向上)へ の挑戦、チームワークの重視、人材の育成など中核にします。
加えて品質管理手法(経営手法)としてのシックスシグマを重視します。 シックスシグマの重視は、この手法をマスターしていないものは管理者や経営幹部に登用 しないという徹底ぶりです。
これはGEウェイ(道)として全幹部・管理者、従業員に示され、この価値観を共有し実 行するもの、さらに業績を上げるものを評価します。 業績がよかっても、価値観を共有できないものは、さらに部下を育てないものは評価せず 別の組織へ去らしめます。
ここでの管理の手法は、真に勝つための価値観を共有する者、さらに積極的に実行し成果 をあげるものを思い切って厚遇し評価し報酬を提供します。 生き残って大いなる報酬を得るには、企業が示す価値観に共鳴し、その示す方向性に則り あらん限りの力を発揮することが唯一の道となります。
最後に、
日本の優良企業の戦略では、管理の基本たる覇道の管理も行われますが、ここにさらに働 く人の「働く喜び」の仕掛けも組み込んだ管理も実現されているように思われます。 最後の生き残るのは覇者の道かさらに「人間性」共感を知る王者の道か、ここでより深い 管理のあり方を知らなければならないようにも思われます。