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42回目 こうしたら勝てる

「勝てる」条件

勝つための条件は、この問いかけに京セラの稲盛さんや日本電産の永守さ んをはじめとする多くの名経営者は禅問答のような同じ答えをします。 それは「成功するまでやり続けるから、だから失敗はしない」というのが それです。
これに対して大企業には資金があり、優秀な人材が集まっているのだから 当たり前だという意見があります。 いっけん当然なことで、この二つの条件が揃わない中小企業がなんぼ頑張 っても仕方がないと諦観される経営者もいます。
ところがこれに対しての稲盛さん、永守さんの話は違ったものです。 どちらも創業時のことを振り返ってみると、しばらくの間の最大の関心事 は資金繰りで、これからどうしようかの四苦八苦だったと苦労話が出ます。
人材についても同じ有様で、京セラで扱くセラミックは陶器なのでその製 造過程はと言えば炎と粉じんのなかの3K作業であり、決してめぐまれた 作業環境とは言えません。 そのためか、これはと思っていた後継者候補の優秀な人材はほとんど辞め ていったそうです。
永守さんも同様で、少し業績が上がって大学卒を採用しようとしたら、初 年度はほとんど集まらず、翌年度応募してきたのは名前も知らない大学の 学生ばかりで、「成績を見ると可、可、可でブンブンと飛び回っていた」 と当時を語られます。
ところが、結果はというとそれらの優秀でないと称される人たちが偉大な 成果を実現させてきたのです。
この経緯について、永守さんはおかしく語られています。 企業が中小零細であったときに注文を取りに行くと、とうぜん注文をくれ ません。 それでも根気強く粘っていると、「それほどまで言うのだった、これでき るか」とくれた仕事が他の企業が手を出さない難解な仕事です。
「ありがとうございます。」と受注したものの経験不足では、とにかくや ってみるよりしかたがありません。 必死に頑張って頑張って、多少は精度を上げれたものの注文仕様には程遠 く仕方なくお断りに行くと「ここまでやったんか、それだったらもう少し 頑張ってくれ」で断れなくなってしまい。 さらに改善をすすめたところ条件をクリアーできなかったものの運よく注 文をうけることができたそうです。
不可能なことにいかに挑戦しきるか。 一般にこのことをイノベーション(革新)と言います。 革新というと戦略の花で颯爽としたイメージがありますが、その実は中堅 企業であろうとベンチャー企業であろうと、寝る間を惜しんでの汗まみれ の挌闘になります。
永守さんは、さらに話されます。 一般に優秀と言われる人材は、不可能と言われる依頼については理論立っ て不可能を証明立てるそうです。 そうでない人は「これをしなければならないんや」と言うと、分からない まま必死に無謀なことに挑戦しそれなりの形がつくられるそうです。
おまけの話として「そうかなあ」とも思うのですが、形ができたら優秀な 人材の出番で、そこから完成に持って行くのはさすがにたいしたものだそ うです。
永守さんには、絶対に成功に導く呪文があります。 「すぐやる。必ずやる。できるまでやる。」 稲盛さんも言われます。 最先端の技術開発は、学歴優秀で際立った従業員が成したものではなく、 ごく普通の人たちの必死の努力で完成されたものです。

時代と成功との関わり

時代は変化します。 そのなかで、進取の志のある人が時代の匂いを嗅ぎとって挑戦を行います。 チャンスは多くの人に平等に訪れ、多くの成功者とさらにその上を行くト ップクラスの大成功者が生み出されます。
何が、登りつめる経営者とそうでない経営者を分けるのでしょうか。 もちろん、時代の変化を嗅ぎ分ける嗅覚がなければ話になりません。 さらに、チャレンジしない人には、最初から関わりを持ちません。 問題は変化にどのように関わるかです。
変化というと一般にテクノロジーの変化が思い浮かびやすいのですが、電 気、自動車、ITなどがそうで、それに関わって中堅企業を創り上げた名 経営者が多くいます。
それとは別にして、消費者の購買行動の変化をもたらすような利便を提供 して成功する経営者も多くいます。
変化には欲求レベルの変化もあります。 そこで、「感動」が成功のキーワードになっています。 感動は最高の満足以上のものが体験できたときに起きるものです。
奈良ドリームランドというディズニーランドを模した遊園地がありました。 1961年の開業で最盛期には160万人の入場者があったそうです。 東京ディズニーランドができるまでは、子供の最高のあこがれの遊園地だ ったのですが、結局はほんものには勝てず2006年8月に閉園となって しまいました。
ここでなぜドリームランドのことをあげたかというと、いつの時代も人は より以上の満足を求めます。 欲求は「不足の解消」「満足の実現」さらに「感動の体験」とそのあり方 がバージョンアップされます。 感動すらも一番のもの以外は受け入れなくなります。
奈良ドリームランドの開設は、日本ドリーム観光の松尾國三氏がアナハイ ムにあるディズニーランドに感激して、ウォルト・ディズニーに直接面会 し日本に誘致しようとしたことがきっかけでした。 しかし、交渉は行われたもの結局ライセンス契約ができず本物をつくるこ とができなかった経緯があります。
本物はオリエンタルランドが粘り強い交渉が功を奏して、浦安市につくら れることになりました。 時代はいつも、「より以上のもの」「まったく満たされていなかったもの」 を求められ、そこに機会が生まれます。 ここで言いたいことは、一番のものしか成功は続かないということです。
ディズニーランドは、ウォルト・ディズニーの強い美意識に導かれた強い 思いから生まれました。 他にもあります。 iPhoneは、基板パターンに美しさを求めるスティーブ・ジョブズという美 意識と完璧さを求める経営者によって造られました。
感動できるのは、一時的な一過性のでき事です。 その感動を継続させる強い意識の持ち主がトップクラスの成功者になり、 その周辺で満足を実現させる経営者がその地位にしばらく留まることがで きます。

成功する経営者の行動パターン

成功、大成功する経営者には共通した体臭があります。 まずあるのは「自分のしたいこと」と「時代の欲求」とを同時実現すると いう自他目的の同軸化です。 ここに事業活動の焦点が定められます。 この同軸の目的を果たすために、あらねばならないと信じたことに対して はあらゆる障害を乗り越えて実現する意志力を持つことです。
同じくする同軸化欲求の動機について少し解説を行います。 大成する経営者は、自分の事業が大好きです。 テクノロジーの典型は、ホンダの本田宗一郎さん、トヨタの豊田喜一郎さ ん、ソニーの井深大さんです。
好きこそものの上手なれと言う言葉があります。 話が飛びますが、徳川家康にはあまり感じられないのものの、織田信長や 豊臣秀吉には戦国の仕事師の匂いがプンプンとします。
戦国の仕事師といえば軍師がいます。 実在の人物だったかどうか定かでないのですが山本勘助がいます。 秀吉の軍師の竹中半兵衛、黒田官兵衛、今川義元の太原雪斎、軍師ではな いのですが毛利の外交僧の安国寺恵瓊などは仕事師の匂いがします。
世界を見ると、アレキサンダー大王やシーザーさらにナポレオンなどもそ んな風に感じられます。 話を戻します。 ただ、好きであればよいかというとそれは根本条件です。 その他にも必要条件があります。
次に述べたい必要条件は、揺るぎのない価値観を持っていることです。 普遍の価値観であればあるほど多くの仲間を呼び込めます。 顧客に対する価値観、働く人への価値観、社会への価値観、もちろん事業 そのものへの価値観、一番を目指す価値観、さらに加えて美意識も必要と されます。
もう一つは、当然のスキルとしてマネジメントができることです。 ただし、経営者自身に絶対的に求められるのは価値観であって、スキルに ついては価値観を同じくする「真摯な」信頼できるパートナーに委譲し中 核活動にへの集中が必要です。
もともとトップマネジメントは、最終責任は留保するものの集団で行う性 質のものです。
価値観はなく器用であり有能な起業家には、ある程度また短期的に成功す る多くの方がいます。 しかし、価値観がなければ強さを欠きその分弱くなります。 仕事そのものを価値とし仕事好きな経営者は、さらなる高みを目指して更 なる夢を見ることが出来ます。
棚ぼた式の成功は、例えば高額の宝くじの当選と同じでかえって自己破産 の道を歩むケースが多くなります。 何故なら、仕事が好きでなく利益の源泉である顧客の存在に思いが至らな いからです。
事業の持つ「からくり」を知らずしての自己欲だけで事業を行うのは、暴 発物を抱えて火事場に飛び込んで行くことにもなりかねません。 翻って多くの名経営者に見られるのですが、意外と物欲には対しては淡白 な傾向があるようです。 ただ事業欲に対しては、真逆のものを持っておられるようです。