「考え方」の役割
『より良いものが欲しい』が、すべての生活者の基本的な欲求です。
ここで消費者ではなく生活者という言葉を使ったのは、購入されるのは物で
はないということを強調したいがためです。
この意味合いから考えはじめて、そして世の中の基本原理である普遍とその
変化である流行について考えて、それらを経営に活かしていく成功者をベン
チマーキング(ベストを標的に学ぶ)してその姿を探って行きます。
一般的に生活と言えば衣食住が思い浮かぶのですが、このなかで「住」は今
でも「手が届かない感」はありますが「衣・食」についてはずいぶんリーズ
ナブル(値ごろ)に手に入れることができます。
二昔前の年配の人にとっては天丼や牛丼は大御馳走で、バナナや卵でもけっ
こう喜ばれるというそんな時代もありました。
「衣」についてもチョットしたおしゃれな女性であれば、タンスのなかには
20・30着の洋服があるなんて普通のことなのだそうです。
もう暑さ寒さに関係なく「見栄え」が、とうぜんの選択基準でしょう。
女子高生が酷寒のなかで、ソックスが厚めになるかもしれませんが、相変わ
らずの短めのスカートでがんばっているのはそんなことの代表例でしょうか。
ほとんどの商品は少し無理をすれば手に入れることができますが、そこで購
入の決め手になるのは基本機能よりも2次機能や付加価値でして。
製品というモノとしての基本機能が悪ければ論外ですが、そこに満足を与え
る商品としての「コト」が付加されていなければ購入に至りません。
電車の中でゲームができるスマートフォンなどは「コト機能」の集合です。
ところでこのスマートフォンですが「誰がつくったか。」と聞かれたら、即
座に「ステーブ・ジョブズ」と答えが返ってきますが「大阪城をつくったの
は、大工さん。」の答えのように厳密に言うのであれば技術者スタッフがつ
くりあげたということになります。
ステーブ・ジョブズはイメージして「それと違う」と言い続けただけです。
うがった言い方をしましたが、まず「イメージありき。ビジョンありき。」
でこれが「コト」のあり方を示すものです。
この顧客満足を実現させられる「コト」が「効用」があるということです。
たとえば「映画」が「テレビ」に取って代わられたいえども「大迫力や感動
を与える映画」であれば「感動」という「効用」で顧客を呼び込めます。
要するに、普遍なのは最適・最良の「効用」をいかに実現させるかまたさせ
続けるかが企業のなさなければならない「仕事」であるということです。
ステーブ・ジョブズがなした仕事の卓抜さは、だれもが予想もしなかった高
レベルのその時点での最適・最良の「効用」を可能にしたことです。
変化に合わせることを超えて、変化を起こしたことにあります。
人はいつも、より良い「効用」を求め続け、企業はいつもより良い「効用」
をつくり続けなければいけない「普遍」と「流行」の中で生きています。
そこで考えたいのは、そんな原理の中での経営者の役割は何かということで
すが、経営者の役割はより秀でて良い「効用」をつくり続けていけるような
柔軟対応のできる組織をつくり生産的に運営することに尽きます。
ある意味そんなことは当たり前なので、どうすればよいかへと進めます。
幾度も話題にあげています稲盛さんの人生方程式人生・仕事の結果=考え
方×熱意×能力を、これを思案のもとに考えてみます。
この方程式ですが「肝」になる項目が「考え方」で、あるべき「考え方」を
一つでも二つでも多く持ち得たら後のことは必然的に備わるでしょう。
「経営のコツはここなり。」が意味する「考え方」を、腑に落ちて自分の身
体の一部になるところまで行ければ力を発揮する道が開けて行きます。
稲盛さんは「考え方」のあり方の意味を「プラス」「マイナス」で推し量り、
「マイナス」の考え方であるのなら「能力」「熱意」が強ければ強いほど大
きなマイナスの結果へ導くとしています。
松下幸之助さんの「運」
いつも、ベンチマーキング(ベストを標的に学ぶ)して引き合いに出してし
まうのが、松下幸之助さんで今回もそのようにします。
昔パナソニックの古い幹部の方の話を聞きましたが、帳簿付けを夜なべして
していると、ヒョコヒョコと寝間着姿のおっちゃんが声をかけてきたそうで、
よく見ると松下さんだったそうです。
松下さんと言うとすぐに「経営の神様」が思い浮かんでなんでもチョコチョ
コとやれば奇跡を起こしてきたように思うのですが、奥さんには頭が上がら
なかったようでと言いながら外では子供もつくってもおられます。
人である松下さんですが、自身の越し方を振り返って「運がよかった」から
ここまで来れたのだと言われるのです。
ただ、この「運」は「宝くじ」を買って当たる「運」と異なるもので、生い
立ちもありますが「経営のコツ」である考え方を持ったことによります。
「心配で夜も眠れず脈も停滞することもある。そこに経営者の存在価値があ
り生き甲斐仕事のし甲斐がある。そう考えましょう。」と言っておられます。
人誰しもしたくない「苦悩」を、逆転の発想で見ておられます。
「考え方」と言いましたが、まずそれに先行する2つの「思い」を持つこと
がこれに先行するのではないでしょうか。
一つ目は先にあげた「運がある」という考え方で、船から落ちて冬でなかっ
たから助かったと思い、自動車に自転車ごとはね飛ばされそこに電車が来て
手前で止まってくれたことを松下さんは「運」だと感じられています。
事業を始めたことについて「運命というべきものがあってこの事業を始めた
のだ、と感じてきたのです。」と言い「非常な困難に直面したこともたびた
びありますが、ぼくの意思は基本的に動揺しなかったですね。」と続きます。
困難の際に行きつくと「これは運命だ。だからこれより仕方がない。」とあ
きらめると「そこから勇気が湧いてきた。」と言われています。
「使命」という言葉があります。企業の使命は何かということになりますが、
ソフトバンクの孫さんは「情報革命で人々を幸せに」さらに具体化して「一
人でも多くの人に喜びや感動を伝えたい」としています。
この考え方は「マーケティング」の核心で、この目的のためにバリューとし
「No.1」「挑戦」「逆算」「スピード」「執念」の行動指針を掲げています。
使命感が事業に力を与える源泉で、松下さんの場合はそれが「運命」という
言葉となっており挫折などあってはならない極致にいます。
天から与えられたものであるので「成功するまでやり続ければ」「天」が見
放すなどあり得ないという達観が生れています。
ここまで達観されている経営だから「凄み」を持つことができるのでしょう。
「天」を引き合いに出したので、どのような恩恵があったのかを見てみます。
戦後、松下さんは「財閥指定」を受けて一切の経営活動を停止されました。
「これは理不尽だ。」ということで、行動を起こされました。
戦後の混乱の中、超満員の汽車に揺られて東京にあるGHQ本部に50回も
陳情に通い詰める「執念」、この執念を持てることが恩恵です。
余談になりますが、信念、執念の人である松下さんには心酔者がいました補
佐役である高橋荒太郎さんで、この高橋さんはGHQへの陳情に松下さんを
超えるなんと100回も通い詰められたそうです。
財閥指定解除の経緯も、社員の嘆願も効果があったのですがGHQの様子の
変化を巧みにとらえた高橋さんの活動があってなされたことだそうです。
もう一度、成功方程式に戻りますが「考え方」の根源に遡って「思い」があ
り、それが「使命感」「運命観」をそれから「熱意」を引き出します。
「使命感」「熱意」が上質の「能力」を育て上げるという連鎖になります。
京セラの稲盛さんは、俗な言い方ですが「一地方大学の出身」なのに「熱意」
で最先端のファインセラミック製品をつくり上げて来られました。
このように話をしていますと「それって経営(マネジメント)の話ですか。」
となりますが、経営(マネジメント)はどうしても「成すのは人」であるの
で「人は、パンのみにて生くるにあらず。」に行きついてしまいます。
マネジメントには「人のマネジメント」と「仕事のマネジメント」があり、
「考え方」と「熱意」は「人のマネジメント」の根幹を成すものです。
当初の本題からずれて経営者の「考え方」に論点が集中しましたが、変化を
マネジメントするのは逆説になりますが基盤となる「普遍」たる「使命感」
が必要だということになりその意味合いについてさぐりました。
一番最初のフレーズ「『より良いものが欲しい』が、すべての生活者の基本
的な欲求です。」で、適えることが「使命である」として分析します。
このフレーズにはふたつの意味合いが含まれています。
一つは「欲しいもの」とは「効用のあるもの」で、人には基本的な人として
の低次から高次までの本来的な欲求があります。
この欲求の本質は「普遍」ですが、より以上のもの一番のものを求めるので
その欲求は止まること知らず「変化」「流行」します。
「万事塞翁が馬」の発想
経営学者のドラッカーによりますと、企業の目的の定義は一つしかないそれ
は「顧客を創造すること」と言っています。
「顧客創造」とは耳慣れない熟語ですが、分かりやすいのは「スマートフォ
ン」や「ポケモンgo」古くは「ウォークマン」などのように、新たな商品
やサービスつまり「効用」を適えることで新たな顧客を生み出すことです。
永遠に存続しつづけることを前提とする企業においては「カイゼン」「イノ
ベーション(革新)」がなくてはならず、より良い「効用」新たな「効用」
をつくり出すことをできないとお先は真っ暗になります。
さらに、いくら改善、改革してもお客さんが求める欲求を満たすという「ミ
ッション(使命)」を果たせないのであれば「しない」のも同然です。
松下さんは「水道哲学」と呼ばれる「この世に楽土をつくる」というミッシ
ョンをかかげ、先に言いましたように、孫さんは「情報革命」で「一人でも
多くの人に喜びや感動を伝えたい」という「使命」をかかげています。
自分の「天運」を確信して「運命(使命)」が与えられているならば「成果」
が得られるまで「知恵」の限りを尽くすより手立てはありません。
ところがですが、中国の「ことわざ」に「人間万事塞翁が馬」というものが
あり「人間の吉凶・禍福は変転し、予測できないことのたとえ」とあり、松
下幸之助さんの「運」がまさにこのことの有様を示しています。
自身の「貧乏であったこと、学歴がなかったこと、病弱であったこと」をし
て「運」が良かったことなのだとする「経営の核心」を見出さています。
これを「運」だとは、世間一般の「運」の考え方と大きく隔たりを持ちます。
しかし、松下さんが自己分析して到達された達見であって、ここにこそある
べき経営(マネジメント)が凝結される要素が詰まっています。
あらためて思うのは、経営の本質は技能や知識やテクニックといった表層の
ものでなくもっと深いアート(芸術)や覚醒にも至り得るものがあります。
松下さんはドラッガーの経営論理と同等するマネジメントのエッセンスをど
う体得したのか、それは「貧しさ」故に「船場」という「商売の聖地」に丁
稚奉公し日々の思いの中で生身で体得する環境にあったからなのでしょう。
また、すこしずれますが立川文庫の戦記物が好きで、そこから多くの英雄の
心根と事の処し方を学んだそうです。
松下さんがよく言う「血の小便が出るまで考える(心配する)。」は「船場
商道の慣用句」で、商いを成功へ至たしめる最も基本的な「ノウハウ」。
発明家で「良い製品」をつくったらから大成功とする人が、多くが挫折しま
すが「血の小便」の心意気で「改良ソケット」販売にたどりつけるのですが、
その道程では発明家の悲哀をたっぷりと味わっています。
良い商品であったとしても、信用もなく実績もない企業がその商品を売るの
は並大抵ではできないもので「京セラ」の稲盛さんにしても「日本電産」の
永守さんにしても、成功のコツは「成功するまでやり抜くことだ。」と異口
同音に言われ「血の小便が出るまで」を実践されています。
苦労してやり抜いた人のみが「コツ」「知恵」「自信」を獲得しています。
人材にしろ企業にしろやり抜いて困難な課題をクリアーした経験が、競争力
の源泉である「知識」「知恵」「ノウハウ」「自信」といった経営資源を獲
得することができ、それらを共有することが企業の「強み」を形成します。
人材が最大の経営資源であるので、チャレンジをうながし学習する場と機会
を与え失敗を許容することが「強い組織」をつくりあげる基本です。
少し本題からずれましたが「万事塞翁が馬」の、松下さんの「学歴がない」
「病弱である」は大経営者となりえる「運」の一要素とはどういうことか。
「学歴がない」ことを「逆手にとる才覚」で、すべての人から「衆知」を集
めて「血の小便が出るまで考え抜けば」、半端でしかない「学識」を誇って
意思決定する人に劣ってしまうことは至って少ないことでしょう。
「病弱である」は松下さんにどんな経営姿勢を与えたのか、己一人の体力・
精力だけで勝負することを最初から放棄させてます。
経営者の「仕事」は「オーケストラの指揮者」と同じで、楽団員の「技能」
と「情熱」を一つの「テーマ」のもとに調和させ奏でることです。
「病弱」であるが故に「学歴」がないが故に「テーマ(ミッション)」を明
確して、その実現のために社員の「能力」と「情熱」「知識」を活かすこと
に「素直」に「知恵」を尽して「指揮」したことが名曲になったんです。
GEのジャックウェルチが、経営者の役割はチア・リーダーと同じだと言っ
ているのはまさにこのことで「ビジョンを明確にし、人材を抜擢して、予算
を与えたら後は応援するだけだ。」としています。
名指揮者(経営者)は、テーマ(ミッション、ビジョン)を決め、楽団員の
持てる能力を最大に引出して調和させて聴衆に感動を与えるのです。
今回、ここで言いたかったことは三つあります。
企業経営とは生身の活動で、成功しつつづけるのには生身の知恵と精進がい
るということ、名経営者の最も求められるのは「考え方」であること、そし
て最後に言いたかったのは「人間万事塞翁が馬」であって、チャンスは「不
運」と「幸運」のいつも背中合わせであるということです。
最後のことを特に言いたかったので「不運」のなかにあっては「不運」に復
讐して逆転させる「知恵」と「忍耐」が「必要だなぁ。」と思い。
正しい「考え方」のもとに、それを成し得ることのみが「不運」という「幸
運の兆し」を手にして「利他」ができれば最高の「生き様」と思えるのです。
とにかく「生きるのは、××なので」「尊厳を持たれよかし」であれれば。
≪アベノ塾≫ URL:http://abenoj.jimdo.com/
