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10回目 「収益」を生み出すために「知識」を引き出す仕組み

「GE」の「ワークアウト」

「知識」は、企業にとって最大の経営資源です。世界のどの高収益企業でも、この「知識」の取り込みによって新商品を開発し、生産性を向上させて 現在の地位を確立しています。 「知識」は現場の中にありますが、組織がそれを取り出す仕組みを持たなければそのまま埋没してしまいます。
GEとはジェネラル・エレクトリック社のことで、世界でも屈指の優良企業です。
「ワークアウト」とは、現場の知識を引き出す仕組み・方法で、埋没する危険のある「知識」を 発掘するとともに、働く人を問題解決に参画させ意欲を向上させる仕組みです。 もちろん、問題解決により利益をもたらせることになります。それでは、ワークアウトについて説明します。
ワークアウトは、もっともタフな経営者とされるジャック・ウェルチによって発案された方式です。
その方式は、現場の社員が8人から12人のグループに分かれて行います。 まず、上級経営者から事業戦略上の強みと弱みについて述べられます。
そのうえで述べられた弱みについてコーディネータの支援を受けながらブレーンストーミングを活用 しながら話し合いを行います。
グループでのセッションが終了後、問題点について担当の管理者の立会いのもと問題解決のための提案が その担当の管理者にぶつけられます。
担当管理者は、上級の管理者・経営者の立会いの下に提案に対するイエス、ノー、保留を即決しなければなりません。
保留の場合は、返答を1ケ月以内に返答することになっています。 承認された提案については、解決責任者を決めて最終的に問題解決されるように進捗状況をセッション全メンバーへ 報告などの措置が取られています。 このようなきめ細かいフォローのもと 問題解決が着実に執行されるような仕組みがとられています。
このような試みはかってないもので、全社的に実施され同社に多大の収益をもたらすとともに、新たな 企業文化が形成され「強み」になりました。
参加したメンバーの中には「就職して20数年年以上経つが、手足以外に頭を使わされたのは初めてである」 と言ったという話があります。

「トヨタ」の「TQC」制度

TQCとは「トータル・クオリティ・コントロール」の略で、全社的品質管理のことです。 QCは、同じ職場内のメンバーによる小グループ(QCサークル)で行います。
QCサークルでは、職場内の品質管理特にムダの削減を目的に自発的に活動します。 これを製造部門以外(設計部門、購買部門、営業部門、マーケティング部門、アフターサービス部門等)に 適用し、体系化したものがTQCです。
全社的品質管理活動の一環として自己啓発、相互啓発を行い、QC手法を活用して職場の管理、改善を継続的に 全員参加で行うものです。
トヨタは1961年に、このTQCを導入しました。 組織的に実践するために、 職場の班をグループとするQCサークルつくり全社的に展開しました。
こうして、提案をする母体が個人レベルからチームレベルへと移るにつれ内容の濃い提案が増えてきて トヨタの企業文化として定着しました。
TQCの特徴は、現場を重視します。 トヨタでは現場のメンバーによって「なぜ」を5回繰り返し問題の本質を突き止め、そこから生まれる 創意工夫を「知識」として活用し問題解決をはかります。
現場の「知識」こそが「強み」の源泉になります。

QCは多くの企業が導入していますが、トヨタが成功した要因はその徹底ぶりにあります。 全社的に創意工夫を求める仕組みがあり、全社的な表彰制度があります。
企業の「従業員」から「現場の知識」を引き出すことに対する関心が人一倍強いのが特徴です。
「知識」は現場にあり。
「知識」の活用こそがトヨタを超優良企業に引き上げた原動力です。
この活動の中心人物は大野耐一氏で、世界的に有名な「カンバン方式」をはじめとするトヨタ生産方式を構築しました。

「京セラ」の「アメーバ組織」

アメーバ組織の「アメーバ」は独立採算組織です。 3つの条件のもとに独立組織として、責任者が選任され採算責任を持ち経営されます。
「明確な収入が存在し、かつ、その収入を得るために要した費用を算出できること」「最小単位の組織である アメーバが、ビジネスとして完結する単位となること」「会社全体の目的、方針を遂行できるように分割すること」です。 その目的を「市場に直結した部門別採算制度の確立 」「経営者意識を持つ人材の育成」「全員参加経営の実現 」 として、各アメーバが「京セラ」の基本目標のもとに自律的に目標を定め、「時間当り生産高」という社内の 付加価値採算基準により評価します。
「京セラの経営理念」は「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」です。
特徴は、「全従業員の物心両面の幸福」が真っ先にあることです。従業員を重視しています。

アメーバ組織と言い、理念と言い、そこには従業員の存在、つまり「人」への関心度が人一倍強いことが伺われます。 経営の根幹は「人」です。これほど、「人」を前面にしている企業は、パナソニックと松下幸之助さんと双璧を なすものです。
「時間当り生産高」という社内の付加価値採算基準や「京セラの経営理念」から喚起されるのは、従業員一人一人の 存在意識です。 それが芽生えるような「仕組み」が構築されています。
それぞれ個々の従業員は、自立心をもって創意工夫が許され導かれる組織が形成されています。
「京セラ」には、個々の従業員の創意工夫による「知識」が創造・活用される環境があり、このことが 「強み」の確立につながっています。 超優良企業に共通することは、それもさらに成長する企業に共通する要因は、「知識」を生み出し・活用する 装置を創り上げていることです。 企業の最大の経営資源は「知識」であり、それを生み出す「人」であり、それをなさしめる「経営者の考え方」です。