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47回目 マーケティングの勘どころ

マーケティングの4P(4C)

マネジメントの創始者のドラッガーは、マーケティングは顧客の欲求から スタートすると言っています。 お客様に「買ってください」と言わなくとも、顧客の欲する要件をすべて 満たしていれば自ずから購入が実現されてしまう。 これが、マーケティングの基本ロジックです。
ところが一般の企業では、とにかく自分の得意なものにこだわります。 もちろんこだわりのないモノづくりには「強み」はありませんが、ただし いくら製造者にとって価値あるものでも「猫に小判」では場違いになって しまいます。 猫であれば「鰹節」が、猫の欲求からのスタートすることになります。

人には人の欲求が猫には猫の欲求があります。 人でも、甘党には甘党の酒好きには酒好きの欲求があります。 さらに酒好きでも、その懐具合で今夜は大吟醸ということになるかもしれ ません。 それも、居酒屋ではなく一流の料亭での一杯かも知れません。 一概にマーケティングといっても、顧客の欲求の状況は多様です。 それ故に、すべての顧客の欲求に対応することはできません。 また、企業が有する経営資源は有限で、その「強み」も限定されています。 孫子の兵法に「彼を知りて己を知れば、百戦して殆うからず。」とあり、 顧客の欲求・価値観・現状を知らなければ殆(あや)ういのみです。

サントリーは、「広告」にもっとも秀でた企業の一つです。 元社長の佐治敬三さんが文化活動に理解が深かったこともあり、文化財団 を有して「感性」が企業の戦略要素にもなっている感があります。 古くは「赤玉ポートワイン」の上半身を出した女性の写真など、感性で商 品を売る趣があります。
パナソニックも広告には熱心な企業で、その最初は松下幸之助さんが自ら 考案した「角型の電池式ランプ」の広告でした。 3日3晩文案を練り、デザインして初めての新聞広告をうちました。 それに先立つ砲弾型ランプの販売においては、新聞広告ではないものの小 売店での点灯試験という斬新な捨て身の実物宣伝を行っています。
ジェローム・マッカーシーという経済学者は、マーケティングの4P:製 品(Product)、価格(Price)、場所・流通(Place)、販促(Promotion) を提唱して、分析の便を与えています。 企業は4Pの要素での卓越が求められますが、サントリーは販促(広告) で他の追随を許さない「顧客の欲求」を創り出しています。
ちょっと脱線します。 最近ではマッカーシーの「マーケティングの4P」よりのラウターボーン の顧客の視点に立った「4C:顧客価値(Customer Value)、顧客にとっ ての経費(Cost)、顧客利便性(Convenience)、顧客とのコミュニケーシ ョン(Communication)」が妥当だとの見方もあります。
どちらにしても顧客からスタートするマーケティングは、顧客を選別して 焦点を絞り、その絞り込んだ市場での4Pなり4Cのマーケティング活動 の実践が求められます。 企業には自ずから得意とする卓越スキルがなければなりません。 このスキルを、いかに4P(C)で活かすかがマーケティングの鍵です。

顧客利便性(Convenience)戦略

いくら欲求にどんぴしゃりの商品があっても、広告で知ってもらわなけれ 購入してもらえません。
紙媒体・テレビがそれを担い、WEBが新たな主役として加わりました。 そのWEBで「知ってもらえる」ということに焦点を絞って、バーチャル モールを構築して先行で成功したのが「楽天市場」でした。
「楽天市場」は、顧客とのコミュニケーション(Communication)と顧客 利便性(Convenience)を合わせて実現させ、顧客価値(Customer Value) については出展企業に依存するとビジネスモデルをとっています。 アマゾンや価格ドットコムは、顧客にとっての経費(Cost)にかかわり顧 客の利便性(Convenience)に寄与しています。
WEBビジネスはインターネットという新たなツールを活用することで、 マーケティングの可能性を拡げています。 インターネットは知りたいというコミュニケーション欲求に、顧客利便性 (Convenience)を加味させた新時代のスキルです。 また、個人が「自己」を公に広めるという利便性さえも実現しています。

4C中の「コミュニケーション」の利便性があれば、4P中の「製品」と 「場所」の利便性もビジネスモデルにもなります。 それこそが「コンビニエンス・ストア」が提供するコンビニエンスです。 もっとも身近にあって、昼夜切れ目なく、公共料金の支払いもでき、商品 も日常的に必要なほとんどが品揃えされています。
コンビニエンスの根本の視点は顧客の利便性の視点です。 金融さえも規制がとっぱわれれば、現金の出し入れだけでなくなんでも可 能になりそうです。
マーケティングの根本視点が顧客の視点であるので、この視点で発想する ことで新たなビジネス・モデルが無限に展開されそうです。
面白いのは受験現場さえも変化して、新たな動きがあります。 東進衛星予備校では、一流講師の講座をWEBで時間内であればいつでも 何度でも繰り返し受講できるという利便を実現しました。
さらに、これがリクルート受験サプリでは、月額980円でカリスマ講師 の授業をスマホで受け放題というサービスになっています。
教育でのWEB活用の流れは、後進国の教育にまで広がっているそうです。 貧困から多くの悲惨と残酷が生まれます。
教育は貧困から抜け出すもっとも有効な手段という認識の下に、無償でタ ブレットを子供に配布して僻地の障害を越えての教育の光を灯そうとする 試みです。
マーケティングの4P(C)要素の組わせのそれぞれ異なる重点化は、顧 客への貢献とビジネス・チャンスのクローズ・アップを可能にします。 経営者が、陳腐化から抜け出し業績回復をはかるためには新たなアイディ アの創出が求められます。
このときに、4P(C)での分析が戦略の手掛かりを提供するでしょう。

価格へのアプローチ

顧客満足のコストパフォーマンスをどのように実現するか。 「ユニクロ」が一つの回答を行っています。
ユニクロは、マーケティングの4Cを総合的に取り込んで1つのビジネス モデルを構築しました。 ただし、このモデルの始まりは、他から模倣によってはじまっています。
また「ただし」を続けますが、模倣から始まったビジネスに上を目指して 商品開発での新たな独創の試み(機能性)が加わり始めています。 東レなどとの共同開発、「ヒートテック」や「エアリズム」の機能性イン ナーは、高機能でありながらリーズナブルな価格が特徴であり、「この商 品がこの価格で買えるなんて」を継続実現させています。
「価格」は顧客の満足を勝ち得る分かりやすい基本要件です。 日本の経済を支えている基本戦略は「この商品がこの価格で買えるなんて」 の実現です。
トヨタの「カイゼン」はこの要件を実現させるのための手法です。 良いのは当たり前、ちょっとした感動でなければならなくなっています。

ユニクロは小売店舗から出発しています。 一般の小売りの場合、商品を見つけそれを仕入れて品ぞろえをします。 ために、自社のみのマネジメントで価格がそこそこ安くてなおかつ感動レ ベルの商品を継続的に確保するというのは至難の業で、これをなんとか打 開しようとしたのがSPA(製造型小売業)です。
ユニクロのSPAはアメリカの衣料品小売店GAP(ギャップ)がモデル で、先に述べたようにベスト・プラクティスです。 この方式が最も多く取られているのは、紳士服量販店でしょう。 面白いのはユニクロの柳井さんは、この紳士服量販店進出を考えていたら しいのですが資金不足で断念した経緯があったようです。 SPA方式の利点は企画から製造さらに販売を一貫してコントロールでき ることで、中間マージンを排してハイセンス・高品質が実現されます。 マーケティングから見ると、顧客にとっての経費(Cost)要求を満たしか つ顧客価値(Customer Value)も水準以上に高められます。 さらに、広告も独自性を打ち出すことができます。
SPA方式は価格訴求に優れていることより、現在はいろいろの業種・業 態に拡がりをみせています。 無印良品、メガネのJINS、家具日用雑貨のニトリ、IKEA、DIY のカインズ、コーナンなどで、価格とデザイン、使い勝手を合わせ兼ねそ なえた時代が求めるビジネス・モデルとして定着してきています。
4P(C)の要素での異なった組み合わせの思い切った切り口での革新が 望まれます。 時代が受け入れ先行できるマーケティングの実現は、イノベーションなく してなることはありません。 そこで最も必要になるのは「ハイセンス」なビジネスモデルでしょう。

<余談> 前回のメル・マガではじめてお便りをいただきました。 ウォルマートの店員の現場での接客態度ことです。 ウォルマートでは、低賃金が常態化しているようで決して上質な接客では ありません。 今のウォルマートは、過去の成功の余韻で存続しているようです。 ・・・・・
ここで述べさせていただいているのは、経営にとってマネジメントが必須 の知識でありぜひ知っていただきたいからです。 マーケティングの基本知識は、中堅企業の経営者はあまり表だって口には 出さないのですが、土光さんその著書の中でふと漏らされたりしています。 口に出すのがダサいという水準まで浸透しているようです。
少し余談を続けます。 “マネジメント”なくして企業の成功はないのですが、働く人や社会への 貢献は経営者の資質と価値観に左右されるようです。・・・・・