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5回目 みんなが本当と思っている経営の「常識」

「売価」と「組織」の常識

経営には「知識」としての一般常識が多くあります。 一般常識であるから「当たり前」のことか、少し「?」です。その一般常識に「売価の設定」と「組織図(系統)」があります。
「売価」の設定については、売上原価+経費+利益の公式で決定するのが常識だと考えられています。
また、利益についても世間的な考え方は「儲けられれば何ぼでも儲けたい」です。

「儲けられれば何ぼでも儲けたい」自体は、普通のだれでもが持っている願望なのでなんら咎められることではありません。
しかし、問題なのは正しくマネジメントを行わなければ実現しないこととまた、正しくマネジメントを習得すれば違った「感慨」も生まれます。
「売価の設定」はマネジメント(特にマーケティング)の「考え方」を持てば少し違った公式が組まれます。「?」の経営常識に、もう一つ「組織図(系統)」があります。
教科書に書いている「組織図(系統)」は決まってピラミッド図です。一番上に経営者がいて、その下に営業部長や経理部長などの部長がいます。そして、課長、係長、一般社員と続きます。
組織にはピラミッド組織しかないように思われています。センスの良い経営者では「頂点は顧客だ、その下に現場ではたらく従業員そして一番下に経営者がいる。」といった理想図を描かれるケースもあります。この二つの経営常識はほんとうに役に立つのというこという観点で考えて行きます。

売価の話

「売価の決定権は誰にあるのか」から考えて行きます。売価は当然企業が決定します。しかし、「売価」が納得されなければ商品、サービスは売れません。その意味で「売価」決定の主導権は、「買っていただくお客様」にあると言えます。と言いながら、適当に「値ごろ」を設定してうまく行く場合もあるにはありますが、価格設定の基本条件は「顧客の心のうちにある売価」を見つけることにつきます。

今伸びている企業の戦略は「値ごろ」で「品質、機能、デザインが良い」で、ユニクロ、イケヤ、ニトリ、アイリスオオヤマ、またマクドナルドと企業名をあげれば枚挙に暇がありません。しかし、「売価」は非常にデリケートな問題です。もちろん、合理的に価格設定を行う製造業の素材は少し事情は違いますが、直接一般顧客に販売する商品・サービスの価格設定は微妙です。
昭和のヒット商品にカップ・ヌードルがありますが、カップ・ヌードルの価格設定は大成功の事例です。最初の価格設定は70円か80円だったということです。それを有識者の助言か何かで、「商品価値は100円である」とし価格設定されたそうです。
この価格設定した助言者の識見がすばらしかったという本当かウソか分からない話も聞きました。100円と価格設定されたのは事実で、最初、問屋を通した正規ルートでの展開を目指したのですが一般商品の3倍以上もして全く相手にされませんでした。それを、東京・銀座の歩行者天国での大々的な宣伝販売や「あさま山荘事件」でたまたまテレビ放映されたことで認知度が高まり大々的に販売されることになった経緯もあります。

高級ブランド商品などは高価格であればこそ売れるということもあります。しかし、その商品がバーゲンになればさらに売れるという現象もあるようです。「売価設定」は、ターゲットとする顧客を明確にし「顧客の心になかにある購入価格」を探り、私の信念により決定する作業です。

組織の話

「組織図」をと求められればピラミッド図がつくられます。最善の組織体系が、最初からあるわけではありません。「組織は戦略に従う」という「言葉」もあります。
戦略の変化にあわせ絶えず変化させるということの困難性があるものの「組織」は「目的」に従わなければ機能しません。

独自な感性を持って、独創的な組織をつくり上げた二人の経営者がいます。一人は、パナソニック(松下電器)の松下幸之助さんで、もう一人は京セラの稲盛さんです。
松下電器が事業部制組織とマトリックス組織をつくり、京セラは「アメーバ」組織です。
お二人には接点があります。稲盛さんが「どのように経営を行えばよいか」を迷っていた頃に、松下さんの講演を聞きに行き感動を受けたということがありました。たまたまその時のテーマ「ダム経営」の話でした。
「健全な経営を行うために、資金、人材、技術等のダムをつくり余裕のある経営をして行こう」という内容でした。その時、参加していた中小企業の経営者が「どうすればダム経営ができるのでしょうか」と質問をしました。
それに対して「まず願うことですな。願わないとできませんな」と答え会場からザワツキと失笑がおこったということです。この時、稲盛さんは強い感動を受けたと言っています。後に、二人が対談した時に松下さんにそのことを言うと、後に松下さんが「聴く人は、聴かれるのだなあ」といったという話があったそうです。
企業には、その企業の独自の「使命と目的」があり、それらの実現のために組織体系が設計されます。それが松下電器(現パナソニック)の事業部制組織であり、京セラはのアメーバ」組織です。

経営の常識と独創

二つの経営常識について話をさせていただきましたが、経営は、松下さんが「ダム経営」で言ったように「思わないけませんなあ」がエッセンスのようです。
「売価の設定」にしろ「組織図の設計」にしろ、「思うこと」、「考える」こと、そうすべき信念があり、そうする努力があってはじめて実現されるもののようです。