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26回目 魅力的な商品づくり

欲求と商品の魅力

普遍的な商品は何かと考えます。 商品とは実感されにくかったですが、2つのモノがすぐに浮かび上がり ます。
それは“水”と“空気”です。
一番理解しやすいのは、よく例にも出る「炎熱の砂漠での水」です。 それも手元になければ、人の“今わの際”にもなる渇望される商品とな ります。
空気もそうですが、ふんだんに無条件に手に入る時は当然のモノで商品 とはなり得ません。 しかし、欠乏するともっとも強力な「欲求」の対象になります。
商品を定義すると、それは人の欲求やより強くは渇望を満たす“コト” と言えます。 商品は人の欲求に関わることがなければ、もしくは関わる機会をなけれ ばただの「モノ」であり「コト」でしかありません。 しかも、なんらかの「効用」で一番でないものは売れる商品にもなりま せん。
人には欲求があります。 その欲求を満足させられることによって、顧客はその「効用」に対して 対価を支払います。
商品の開発についてはこれが基本中の基本ですが、多々にして私が持っ ているモノや上手に作れるモノを売りたいからはじめます。 ヒットの商品づくりは、人がふともらす本音の「つぶやき」やちょっと した人間観察から生まれることも多くあります。
チキンラーメンは安藤百福さんが、大阪・梅田の闇市でラーメン屋台に 並ぶ行列を見て発案したものです。 ソニーのウォークマンは、創業者の井深大さんの手軽に音楽を聴きたい という要望がきっかけで、当時の社長であった盛田昭夫さんが商品化し ました。
ヒットする商品とは、時代のさきがけとなる欲求を具現化することです。 ひとの欲求の欲求を満たすものは「効用」です。 商品やサービスの中心は「効用」です。 人の欲求を満たす効用こそが、商品でありサービスです。
人の「感動したい」という欲求が、ビジネスになっている事象には枚挙 に暇がありません。 人には「感動」したいという根源的な欲求があります。 古くから「音楽」「絵画」「舞踏」「演劇」また「映画」「テレビ」 「ディズニーランドやUSJ」「ゲームソフト」などと現在に至ります。
ビジネスの根本原理は、社会の中で顧客欲求を目的・目標にして、その 欲求を誰よりも“よりよく”満たすことです。 その貢献により、企業は存続することができます。

2つの効用(商品・サービス)づくりの流れ

いつの時代もそうなのですが、過去とはいつも様相が異なります。 また、地域によってその市場の現実も異なります。 そこでは、いつも考えの根本になるのは3つのキーワードである「現実、 欲求、価値」です。
日本においての時間軸で考えてみますと、 戦後というともう古い時代になりますが、1940年代後半の「欲求」 は、何が入っているか分からない雑炊でお腹を満たし、身につけること ができればどんな古着でも着て、底の穴を修繕したお鍋でも貴重な台所 用品でした。
それが1950年代後半になると、三種の神器と呼ばれる白黒テレビ・ 洗濯機・冷蔵庫の家電3品目が欲求の代表になってきます。 さらに、1960年代半になると、今では日常品のカラーテレビ・クー ラー ・自動車の3つが新・三種の神器となり人々が渇望する夢の象徴で した。
欲求のあり方は変転します。 現在の求められる商品キーワードは2つで、「感動」と「値ごろ感」が それです。
今、すべての商品に価格破壊がおこっています。 価格についての感度が高まっていることが、その背景にあります。 それと同じくして満足のレベルが常に高まり、「感動」すらも日常化し た欲求にな理つつあるのが現実です。 そして、この2つを満たす商品群が現れてきています。
「値ごろ感」の創造についていうと、そこには一連のパターン化がすす んでいます。 それは、製造型小売業(SPA)の方式です。 SPAとは、「speciality store retailer of private label apparel」 の略で、訳してみると「独自のブランドをもちそれに特化した専門店を営 む衣料品販売業」となります。
日本では「ユニクロ」や紳士服では洋服の青山(青山商事)、AOKIホ ールディングス、エフワン、はるやま(はるやま商事)など一つの潮流に なっています。
SPAは、自身の責任おいてデザインに始まる商品企画、製造(外注)、 そして自身の小売店で販売します。 その過程になかで魅力づくりとコスト削減がマネジメントされます。
製造型小売業(SPA)の方式は衣料品にとどまらず、家具ではイケヤ、 ニトリ、日用品雑貨ではアイリスオオヤマや一部のホーム・センターにも 取り入れています。
ファースト・フードでも同じ発想で、マクドナルド、ケンタッキーフライ ドチキンさらに多くの居酒屋チェーンがこのビジネス・モデルを取り入れ られています。
もう一つのあり方については、 「感動」を基軸に事業展開を行なわれます。 主に物販業ではなくサービス・娯楽業が中心的な流れになっています。 その中心的な存在が人気のあるテーマパークで「ディズニーランド」や 「USJ」で、もう一つはリッツカールトンなどの高級宿泊施設、高級レ ストランです。
さらに付け加えるならアップル社のスマートフォンのiPhone、タブレット 型情報端末のiPad、携帯音楽プレーヤーのiPodシリーズなどが「感動」商 品です。
「感動」の商品は、高くても顧客が“価値あり”とするのなら徹夜をして も購入のために手間暇を厭いません。
「値ごろ感」と「感動」、さらに「値ごろ感」プラス「感動」の「複合効 用」が顧客の求める潮流になっていると考えられます。

「満足・感動の価値づくり」のパターン

人の欲求をよりよく提供することによって、企業は存続でき成長の機会を 得ます。
一番か少なくとも二番、または何かにおいて最も秀でているのでなければ 成熟した社会ではその存在基盤を失います。
現在は、物質的には一定水準を越えた環境にあります。 しかし、「幸福であるか」か「満足であるか」といえばまだ満たされてい ません。
また、“欲求”はいつまで経っても満たされる尽すことがない特性があり ます。 対応しなければならないハードルやあり方はつねに変化します。 ビジネスには、いつもでも機会がありまた絶えず生まれます。
そして、今日の「生活者(消費者)」の求める欲求は一つは「感動」の流 れで、もう一つは「より以上の満足」の実現とその「対価の納得感」です。 企業は、これらの流れに対応しなければなりません。
このことがなくして、顧客に対価を支払ってもらうことはできません。
どうして創り上げるか、 まず基本的なスタンスが必要です。 このスタンスはについては、「感動」か「納得感」か目指す方向性で若干の 相違はあるものの基本は同じです。 もっともこのスタンスはマネジメントのそのもの基本で、より深い徹底が必 要だと言えます。
基盤となるのは価値観の共有です。 そして、その価値観を実現するための制度、システム、リーダーシップの実 践です。
基盤となる価値観は、「ターゲットである私たちの顧客」に対して、その 「顧客の持つ欲求」を一番の「感動」や「満足」を与えることを使命と考え ることです。
「価値観」はすべての従業員にイメージできる「ビジョン」や「目標」とし て示さなければなりません。
共感できるかたちで示さなければなりません。少し付け加えていうならば共感できない「 価値観」にはチャンスはあり得ま せん。そしてコンセンサスになるまで周知徹底をはかります。
そのうえで、顧客の欲求の流れや変化を機会としてそこに焦点を絞って経営 資源を投入します。 そして、よりよき行動に導くための制度として「価値観」評価システムを活 用します。
ユニクロを例にとると、 「スーパー店長制度」や「抜擢制度」があり、求められる行動を実現する人 材については年齢、経歴にかかわらず思い切って登用し評価して人材育成を はかっています。
システムとしてはSPA方式をとり、製品の機能、デザインについては外部 も含めもっとも貢献する機関を活用し、品質レベルは自社で規定して実務経 験豊富な企業OBを積極活用しての高品質を実現しています。
リーダー・シップについては、顧客を魅惑する価値観と高い目標設定が必要 です。 柳井さんの“世界トップ”を目標にした絶えることのない構想実現のために、 現場を率先垂範で引っ張って挑戦し続けられています。